骨肉腫は原発性骨腫瘍の中で最も発生頻度が高い疾患である。化学療法の進歩により生存率は改善したが、未だ遠隔転移を生じ予後不良となる症例も存在する。腫瘍細胞の悪性形質には、腫瘍細胞自身の増殖能・転移能が関与するのみならず、腫瘍細胞周囲に存在する正常細胞との相互作用が重要であることが、近年明らかとなってきた。特に遠隔転移に関しては、細胞同士の直接接触がなくても作用する液性因子の存在が重要であると考えられる。また、腫瘍増殖をサポートする骨髄由来免疫抑制細胞が、その液性因子によって誘導されている可能性も考える必要がある。本研究の目的は、骨肉腫の遠隔転移成立における、腫瘍微小環境内および遠隔転移部での液性因子の関与とその意義を解明することである。我々が考案した共培養モデルは、腫瘍微小環境という局所的な問題だけではなく、骨肉腫の遠隔転移という悪性腫瘍における最大の問題に対しても、その様々なメカニズムを解明できる実験系である。我々はすでに骨肉腫細胞と周辺間葉系細胞の共培養前後での遺伝子変化を網羅的に解析している。その結果、MSCsから放出された因子を受け取った腫瘍細胞がさらなる生態変化もたらすことを掴んでおり、それが微小環境で生じる腫瘍進展の分子機構の解明に繋がると考えている。
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