研究課題/領域番号 |
18K16667
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
高島 弘幸 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (90608738)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 尾部懸垂モデルラット / MR spectroscopy / 筋脂肪変性 |
研究実績の概要 |
尾部懸垂モデルラットを作成するための環境作りが整い、MR spectroscopy(MRS)による筋細胞内脂肪(intramyocellular lipid: IMCL)および筋細胞外脂肪(extracellular lipid: EMCL)の解析を進めている。尾部懸垂前後におけるIMCLおよびEMCLの計測について、前脛骨筋、後脛骨筋、長趾屈筋、ヒラメ筋のいずれかで行うべきか検討してきた。先行研究では、前脛骨筋とヒラメ筋でこれらを計測している報告があるが、尾部懸垂前後ではこれらの筋でどのような変化を認めるかが明らかになっていない。in vivoで両側計測に適したコイルおよびvolume of interest (VOI)サイズについて検討した結果、ボリュームコイルを用いて1.5×1.5×2mmのVOIとすることが収集時間の都合上、適当であった。この検討結果については、学術大会で発表予定である(COVID-19の感染拡大の影響により中止)。なお、尾部懸垂後1週間では、筋萎縮を示唆する下腿筋の筋断面積の減少および脂肪変性の増加が認められず、懸垂期間を2週間および3週間と延長している。2週後には、肉眼的に明らかな筋萎縮の進行が認められることが確認できた。しかし2週を超えると、懸垂している尾部に問題が発生してくることが明らかになり、最長2週で尾部懸垂を解除し、脂肪変性の評価を行っているところである。 現在、wistarラットの6週齢を購入し、飼育環境に順応させた後、7週齢にてMRS、そして2週間の尾部懸垂後、9週齢で再度MRS、最終的にはそのさらに2週後の11週齢でMRSを行うことにしている。これ以降の週齢では、ラットの成長により、動物実験用MRIのコイルに収まらなくなってしまうため、脂肪変性が思うように進行しない場合には、ラットの初期購入週齢などを見直す必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
尾部懸垂モデルラットの安定した環境が構築可能となったことから、MRSを用いたIMCLおよびEMCLの計測を繰り返している。 はじめに、MRSの取得タイミングである、7週齢(尾部懸垂前)、2週間の懸垂後9週齢にて、使用コイルおよびVOIサイズ、計測部位(前脛骨筋、後脛骨筋、腓腹筋、長趾屈筋、ヒラメ筋)について検討を行ってきた。体位については、下腿部のポジショニングが簡便なことから腹臥位で行っている。しかし、腓腹筋やヒラメ筋はサーフェイスコイルからの距離が遠くなり、受信感度が低下するため、前脛骨筋、後脛骨筋、長趾屈筋で評価を行ってきた。しかし、尾部懸垂による筋の変化が少なかったことから、再度、コイルおよび計測筋の見直しを行っており、腓腹筋またはヒラメ筋を対象にする必要性があることからサーフェイスコイルではなくボリュームコイルを用いることを検討し、撮像条件の見直しを行った。さらに尾部懸垂が終了し、その後、運動負荷を加えて2週後(11週齢)になるラットでは、ボリュームコイルのサイズに対して大きすぎることもあり、週齢を1週ずつ前倒しするもしくは、ポジショニングなどの再検討が必要となった。以上が進捗状況がやや遅れているとした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
尾部懸垂モデルラットの環境構築および縦断的なMRSの取得が可能となったことから、今後は、MRS(尾部懸垂前)→尾部懸垂→疼痛の行動学的評価およびMRS(尾部懸垂後)→免疫組織学的評価という順で研究を遂行していく。さらにこれらの症例数が20症例に達した後に、MRS(尾部懸垂前)→尾部懸垂→疼痛の行動学的評価およびMRS(尾部懸垂後)→尾部懸垂なしで運動負荷→MRS(運動負荷後)→免疫組織学的評価という順で検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
尾部懸垂モデルラットにおけるMRSの取得に関連する撮像条件の変更などに時間を要し、ラットおよび免疫組織学的評価キットの購入が予定よりも減少したため、その分、これまでの使用額が減少した。今後の主な使用計画としては、wistarラットおよび免疫組織学的評価キットの購入、研究結果の発信(学会発表、論文投稿など)である。
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