研究実績の概要 |
手根管症候群(Carpal Tunnel Syndrome, CTS)は、絞扼性神経障害の中で最も多く、有病率は, 国や人種により異なるもののおおよそ4~14%とされ, 非常に高い. 近年、正中神経を慢性的に圧迫する原因が、滑膜組織の線維化病態にある可能性が示唆されてから、滑膜線維化病態の制御方法の開発が注目されている。本研究課題では、我々がこれまで着目してきた PDGFRα陽性細胞の蓄積に、細胞老化システムの破綻が影響するとの仮説を立て、細胞老化システムの正常化が本疾患の治療に結びつくか, 動物モデルで検討し、 新規治療法の開発へ結びつけることを目的としている. 当該年度は、手根管症候群の患者および対照群から滑膜下結合組織を採取し、PDGFRα+細胞の細胞老化因子及び細胞老化関連分泌因子の検討を行なっている。方法は、滑膜組織からOut growth法で接着細胞を採取し, PDGFRα+細胞を培養し、 p16, p14, p53, p21, Rbなど細胞老化関連因子のタンパク質発現および遺伝子発現をFACS, 蛍光免疫染色, Real-Time-PCRなどで解析中である。また、手根管症候群患者および対照群のPDGFRa+細胞の培養上清を回収し, IL-6, IL-8など細胞老化関連分泌因子(senescence-associated secretory phenotype)について, Proteome arrayを用いて解析し, CTS患者群および対照者群でSASPの違いを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果 から出されたCTS患者のPDGFRα+細胞に高発現/低減する細胞老化因子について、各種細胞老化誘導方法(irradiationなど)を用いて、正常ウサギ(NZW)/ラット(SD)から採取した線維芽細胞に誘導し、ウサギ/ラットの手根管滑膜に生着させ, In VivoにおけるTGFβシグナル, 線維化関連因子の発現, マクロファージなど免疫細胞との相互作用, SASP因子の発現の変化など, FACS, 免疫組織学解析などを用いたタンパク質解析, Real-Time-PCRなどを用いた遺伝子発現解析を行い, PDGFRα+細胞の細胞老化因子の滑膜線維化への影響を明らかにする.
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