研究実績の概要 |
手根管症候群(Carpal Tunnel Syndrome, CTS)は、最も頻度の高い絞扼性神経障害として知られる。しかしながら、いまだ病因が不明であり、治療法は外科介入に限られている。我々はCTSの病態解明と新規治療法の開発として、細胞老化に着目して研究を行った。手根管症候群患者の線維化滑膜にplatelet-derived growth factor receptor alpha (PDGFRα)陽性細胞の 細胞老化システムの破綻が影響するとの仮説を立てて研究を実施している。手根管症候群患者の滑膜組織および滑膜組織からOut growth法で接着細胞を採取してPDGFRα+細胞を培養し、 p16, p14, p15など細胞老化関連因子のタンパク質発現および遺伝子発現について、フローサイトメトリー解析, 蛍光免疫染色, Real-Time-PCRなどで解析を行い、結果、手根管症 候群患者において細胞老化関連因子および抗アポトーシス関連因子の上昇を認めている。 また現在は、手根管症候群患者および対照群のPDGFRa+細胞の培養上清を回収し, IL-6, IL-8など細胞 老化関連分泌因子(senescence-associated secretory phenotype; SASP)について, プロテオームアレイを用いて解析し, CTS患者群および対照者群でSASPの違いを検討している。また、動物モデルを用いて老化細胞が手根管滑膜の線維化を誘導するか、老化細胞をモデル動物の手根管部に移植した時の手根管滑膜病態の変化を解析するため、in vivo実験を進めている。さらに、米国Mayo ClinicのKirkland教授およびAmadio教授と共同で、細胞老化除去薬の探索として、手根管症候群患者の滑膜に蓄積する老化細胞のアポトーシスを誘導する薬剤の検討を進めている。
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