研究課題/領域番号 |
18K16678
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
寺部 健哉 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 整形外科医師 (10816870)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / metabolic reprogramming / 嫌気性解糖 / 2-Deoxy-D-glucose |
研究実績の概要 |
本研究では、関節軟骨細胞の変性におけるmetabolic reprogrammingの意義と代謝経路の機能解析を行い、炎症下における嫌気性解糖(glycolysis)の亢進の抑制をもたらす薬剤の検討、更には新たな変形性関節症発生抑制の可能性を探っている 。 昨年度までに我々のin vitro実験系における解糖系代謝リプログラミングを細胞外フルックスアナライザー(Agilent Technologies社製)で評価する方法を確立した。牛関節軟骨細胞における過剰メカニカルストレスモデルとしてGSK101を添加することでglycolysisが亢進していることを確認した。 またこれまでに我々はglycolysis阻害剤の一つである2-Deoxy-D-glucose (2-DG)が軟骨細胞の変性を抑制することを確認しているが2-DG以外のglycolysis阻害剤の有用性についての検討としてヒアルロン酸(HA)を使用した。牛関節軟骨細胞をIL-1βで刺激すると細胞外フルックスアナライザーにおいてglycolysisが亢進するがHAはこれを抑制することを認めた。同時にRT-PCR法でglycolysis関連遺伝子であるGlut1、LDHAの発現亢進を確認した。HAのレセプターの一つであるCD44を同時添加するとHAのglycolysis抑制作用は消失した。これによりHAの効果はCD44を介していることを確認した。次にGlycolysis阻害剤である2DGの新たな作用機序としてAMPKの挙動を確認したところ軟骨細胞にIL-1βで刺激すると活性型AMPKは低下し、2DGはこれを維持することが明らかとなった。 以上に加えて今後さらなる解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主題である軟骨変性モデルにおけるmetabolic reprogrammingのメカニズムの検討については細胞内の活性型AMPKの低下を認め、2DGはこれを阻害することを確認できた。炎症以外の軟骨変性である過剰メカニカルストレスモデルとしてメカノレセプターのTRiPV4を刺激するGSK101がglycolysisを亢進させることが確認できておりメカニカルストレスが軟骨におけるmetabolic reprogrammingを誘発することを強く示唆された。以上より次に変形性関節症モデルマウスを用いた実験を行う必要があり、現在準備をすすめており本年度開始する予定である。またin vitroで軟骨保護作用を確認できたglycolysis阻害剤である2DGを変形性関節症モデルマウスを用いて検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに上記検討を行ってきたことより、来年度はin vitro、in vivoの各々の研究を進める予定である。In vitroとして2-DGより選択性の高いglycolysis阻害剤としてPDK-1阻害剤であるdichloroacetic acid (DCA)を使用してその効果を変形性関節症軟骨細胞モデルで検討することである。またメカニカルストレスモデルとしてストレッチチャンバー上で培養し、伸展刺激を加えて過剰ストレス環境を作成して検討する。いずれにおいてもこれまでの検討の延長上に進行していく。またin vivoとして変形性関節症モデルマウスを作成してglycolysis阻害剤である2DGやDCAについて検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
( 理由)in vitroの細胞外フルックスアナライザーを用いた実験を多数施行予定であったが 予想したよりも順調にデータを出すことが出来たため、残金が生じた 。 ( 使用計画)来年度以降も、in vitroおよびin vivoの検証実験を行っていくため、主に物品費として使用する計画である。
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