研究課題
本研究では、関節軟骨細胞の変性における代謝変動の意義とその機能解析を行い、炎症下における嫌気性解糖(glycolysis)の亢進の抑制による軟骨保護作用のメカニズムについて検討した。これまでの研究成果は以下である。1) IL-1β以外の炎症モデルとしてTNF-α、Lipopolysaccharide(LPS)、ヒアルロン酸オリゴ糖を用いて2DGの効果を検討したところ2DGはいずれもMMP13の発現を抑制した。2)他のglycolysis阻害剤としてガラクトースについて検討した。ガラクトースはグルコースと同じ単糖であるがその特徴的な代謝経路からTCA cycleを亢進させglycolysisを阻害する。軟骨細胞においてもガラクトースは2DGと同様にIL-1β刺激によるglycolysis亢進の抑制、MMP13の発現の抑制を認めた。さらにサフラニンO染色でIL-1β刺激による染色性の低下を抑制し軟骨保護作用を認めた。3)上記の作用メカニズムとしてエネルギー代謝のkey regulatorであるAMP-activated protein kinase (AMPK)について検討した結果、炎症でAMPKの活性化は低下し、2DGはこれを回復させた。さらにAMPKを活性化する5-Aminoimidazole-4-Carboxamide Riboside (AICAR)について検討した結果、AICARは炎症によるglycolysisを阻害しMMP13発現抑制、サフラニンO染色性低下も抑制し軟骨保護作用を認めた。4)質量分析によるメタボローム解析を施行し、IL-1β刺激でglycolysis亢進を示す最終産物であるlactateは増加し2DGは抑制した。2DG、ガラクトース、AICARは共通して炎症によるAMPK活性化の低下を抑制し、軟骨保護作用を発揮した。
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