骨肉腫の罹患率は100万人あたり4人と非常に稀であり、若年齢層に好発し、その年代における最も頻度の高い骨腫瘍である。現在まで手術、化学療法、放射線治療を含めた集学的治療により生存率は改善したものの、その予後は劇的な改善には至っておらず、肺転移により最も大きく左右される。また初診時から肺転移がある場合や、集学的治療を行った後でも40-50%の患者に肺転移が生じ、これらの患者は予後不良である。このため、骨肉腫治療においては原発巣のコントロールだけでなく、 転移抑制を目的とした治療法が渇望されている。近年、転移形成において血中循環腫瘍細胞(CTC)の存在が重要な役割を果たすとの報 告が多くされており、骨肉腫の肺転移における血中循環腫瘍細胞の解析を行うことで治療標的分子の検索、同定を目的とする。申請者はマウス骨肉腫高肺転移株LM8を用いて、生きている状態のCTCを浮遊培養することに成功しており、間葉系腫瘍における EMPを制御するメカニズムを解明するには非常によいモデルである。原発巣、CTC、肺転移巣におけるEMPを評価、解析し、それぞれの細胞の性状と内部状態、環境応答性を明らかにすることで骨肉腫肺転移における分子メカニズムを理解し、CTCの制御を 目的とした分子標的治療の開発や転移抑制に特化した新規治療法を目指した。マウス骨肉腫細胞、高肺転移株であるLM8を用いて実験を行った。In vitroではLM8を通常の接着状態と浮遊状態とで培養を行い、その増殖能力の差異を評価した。またin vivoではLM8同種移植モデルで、遠隔転移を認めたマウスの血液からCTCを浮遊培養下で培養し、また皮下原発巣と肺転移巣からも浮遊培養を行い、EMPに関わる遺伝子発現を評価した。
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