研究実績の概要 |
総合せき損センターに損傷後3日以内に入院した38人の脊髄損傷患者の血清亜鉛濃度と運動機能予後との関係を調べた。受傷から採血までの平均期間は1.2±0.2日、平均フォローアップ期間は6.3±0.8か月であった。最終フォローアップ時のAIS gradeに基づいて患者を5つのグループに分け、各グループの入院時血清亜鉛濃度を比較した。その結果、運動機能予後が悪い群は、入院時の血清亜鉛濃度が有意に低いことを明らかになった。また、入院時の血清亜鉛濃度と最終フォローアップ時のASIA motorスコアとの関係を調べたところ、入院時の血清亜鉛濃度と最終フォローアップ時のASIA motorスコアとの間には正の相関があることがわかった(r=0.858)。さらに、入院時の血清亜鉛濃度で脊髄損傷後の運動機能予後を予測できるかを調べるために、入院時の血清亜鉛濃度と最終フォローアップ時のASIA motorスコアとの間の非線形回帰分析を行った。非線形回帰式により算出されたR2は0.838 であった(予測式:最終フォローアップ時のASIA motorスコア=98.064 / {1 + EXP [-0.236([Zn] -67.489)]})。これは、これまでに報告された、他の急性期バイオマーカーよりも著しく予測精度が高かった。次に、脊髄損傷患者が最終的に歩行できるかについて予測可能かを調べるために、入院時の血清亜鉛濃度に基づくロジスティック回帰モデルをコホートに適用したところ、入院時の血清亜鉛濃度は、脊髄損傷患者が最終的に歩行可能かを予測するのに非常に有用であった (AUC=0.974, 95% confidence interval 0.823-0.997, p<0.0001)。 これらの結果は、急性血清亜鉛濃度が脊髄損傷患者の運動機能予後を予測するための有用なバイオマーカーであることを証明している。
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