研究課題/領域番号 |
18K16680
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研究機関 | 独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター(研究部) |
研究代表者 |
久保田 健介 独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター(研究部), 独立行政法人労働者健康安全機構総合せき損センター(研究部), 研究員(移行) (00717069)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 予後予測 / 血清亜鉛濃度 |
研究実績の概要 |
脊髄損傷は経時的に運動機能が回復することが多いが、どの程度まで回復するのか正確に予測することは難しい。そのため、新規治療候補薬が急性期脊髄損傷患者にどれほどの麻痺改善効果をもたらすのか評価することは極めて困難であり、脊髄損傷に対する治療薬開発の大きな障害となっている。そこで、本研究では脊髄損傷後の急性期血清亜鉛濃度を用いて運動機能予後を正確に予測可能か検討した。 運動機能予後が異なる脊髄損傷マウスモデルを作成し、脊髄損傷の重症度、運動機能予後、および急性期血清亜鉛濃度の関係を調べた。また、脊髄損傷患者についての前向き研究を行い、脊髄損傷後72時間以内の血清亜鉛濃度を評価することによって運動機能予後を予測できるかどうかを調べた。 マウスモデルでは、損傷急性血清亜鉛濃度は麻痺の重症度に比例して減少し、受傷から12時間後の血清亜鉛濃度により運動機能予後を正確に予測できることがわかった。我々はこの血清亜鉛比例減少の根底にあるメカニズムを明らかにし、活性化された単球が血清から亜鉛を取り込み、損傷強度依存的に損傷部位に浸潤したことを示した。38人の脊髄損傷患者の非線形回帰分析は、急性期の血清亜鉛濃度が長期の運動機能予後を正確に予測しえた(R2=0.84、予測式:回復後のASIA motorスコア=98.064 / {1 + EXP [-0.236([Zn] -67.489)]})。この精度はこれまでに報告された急性期バイオマーカーよりも著しく高く、脊髄損傷急性期の血清亜鉛濃度が脊髄損傷患者の運動機能予後を予測するための有用なバイオマーカーであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の一部を、英文誌に論文を掲載できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も症例数を増やして、血清亜鉛濃度による神経学的予後予測の精度検証を行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的流行の影響で参加予定であった学会が中止となり、予定していた旅費・参加費が使用できなかったため。
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