ホルモン感受性前立腺癌(HSPC)の治療においてアンドロゲン遮断療法(ADT)が有効であるが、ADT抵抗性を示し、HSPCから去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)へと移行する患者の予後は不良である。PSAによる前立腺癌のスクリーニングにより、早期の前立腺癌が発見され、治療の対象になっている現状では、前立腺癌をコントロールする上でHSPCの治療効果やCRPCを予測し、早期に適切な治療介入を行うことは重要であるが、去勢抵抗性獲得を予測し、治療方針決定に有用な情報を与える予測マーカーは存在しない。本研究では、HSPC患者の血清N型糖鎖の網羅的解析から同定されたCRPC予測糖鎖マーカーをより簡便な血清検査あるいは、Liquid biopsyによる定量法に関する開発応用について検討する。平成30年度は、レクチンアレイによる前立腺癌患者の血漿からの低分岐糖鎖修飾イムノグロブリンの定量検出法の確立およびcfDNA中の糖転移酵素のddPCRによる発現量検出法の確立を試みたが、レクチンアレイでの低分岐イムノグロブリンの検出およびddPCRによる糖転移酵素の発現検出が困難であり、確立には至らなかった。令和元年度以降は、GlyQキャピラリー電気泳動迅速糖鎖解析装置によるイムノグロブリン糖鎖解析法を実施し、イムノグロブリン糖鎖解析法を確立し、限局性前立腺癌患者、HSPCおよびCRPC、前立腺肥大症患者、腎細胞癌、膀胱癌、精巣腫瘍、尿路感染症、尿路感染症に伴う敗血症および健常者のの血清から、合計1312名分の26種類のイムノグロブリン糖鎖プロファイルを得た。このイムノグロブリン糖鎖プロファイルから、機械学習を用いて、各疾患に対しAUC0.88から0.99の高い診断精度を示すCRPC診断モデルを構築した。これらのデータは、論文投稿中である。
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