研究課題/領域番号 |
18K16682
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
日下 歩 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (40815776)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エクソソーム / 糖鎖 / 転移 |
研究実績の概要 |
本研究では、エクソソームのN-結合型糖鎖の網羅的質量解析によって、エクソソームの膜に発現している糖鎖が標的組織や標的細胞選択性において果たす役割に着目し研究をすすめている。エクソソームの膜は脂質二重膜で構成されているが、膜表面には多数の糖鎖が発現している。エクソソームの標的細胞選択性にはインテグリンが重要であるが、インテグリンとフィブロネクチンとの強固な接着の前に糖鎖とそのリガンド分子による接着-ローリングという現象が想定されている。最近、わずか10micro-Lの血清でN-結合型糖鎖の網羅的質量解析が可能な方法が開発され、病態を予知するバイオマーカー開発への応用を試みている。 1)まず、臨床検体(血清)の超遠心・CD9抗体ビーズによるエクソソーム回収と形態、インテグリンの解析腎癌、膀胱癌、腎盂・尿管癌、前立腺癌、精巣腫瘍症例の血清からエクソソームを回収し、フローサイトメーター、ナノ粒子解析システムで各腫瘍ごとの形態的差異とインテグリンサブユニットの差異について検討している。3種の尿路上皮癌細胞株、KK47、RT-4、YTS-1から、超遠心により比較的大量にエキソソームを調製する方法を確立した。調製されたエキソソームの粒度・粒径を、ナノ粒子マルチアナライザーqNanoを使用して測定した。また、ウェスタン・ブロッティングによって、エキソソーム・マーカーであるCD9、TSG10の発現を検出した。上記2つのデータから確かにエキソソームの調製ができたことを確認した。さらに、蛍光色素PKH67を用いてエキソソームを蛍光標識し、細胞内とインキュベートした際に細胞内に取り込まれる過程を追跡する方法を確立した。②臨床検体(血清)の超遠心・CD9抗体ビーズによるエクソソーム回収を開始した。フローサイトメーター、ナノ粒子解析システムで各腫瘍ごとの形態的差異とインテグリンサブユニットの差異について検討を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、「エクソソーム膜表面に発現した糖鎖と血管内皮細胞の接触が標的細胞特性に大きな役割を果たしている」との仮説を立て、癌細胞が分泌するエクソソームの糖鎖と転移との関連性を検討している。 3種の尿路上皮癌細胞株、KK47、RT-4、YTS-1から、超遠心により比較的大量にエキソソームを調製する方法を検討した。エクソソームは非常に小さな分子であり、またエクソソーム自体にもいくつかの細分化されたサイズがあり、安定的に回収する手法を確立するのに時間を要した。調製されたエキソソームの粒度・粒径を、ナノ粒子マルチアナライザーqNanoを使用して測定しエクソソーム回収法を確立した。また、ウェスタン・ブロッティングによって、エキソソーム・マーカーであるCD9、TSG10の発現を検出し確認をした。上記2つのデータから確かにエキソソームの調製ができたことを確認した。 さらに、蛍光色素PKH67を用いてエキソソームを蛍光標識し、細胞内とインキュベートした際に細胞内に取り込まれる過程を追跡する方法を確立した。今後、臨床検体(血清)の超遠心・CD9抗体ビーズによるエクソソーム回収を開始した。フローサイトメーター、ナノ粒子解析システムで各腫瘍ごとの形態的差異とインテグリンサブユニットの差異について検討を開始したところである。
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今後の研究の推進方策 |
進捗はやや遅れているが、エキソソームが癌細胞の浸潤・転移に果たす役割を検討する実験の準備が整った。エキソソーム回収法を確立したので、これからの研究はスピードアップが可能と思われる。今後これら材料を用いて、動物モデルを利用し、エキソソームが癌細胞の浸潤・転移の過程にどのような役割を果たすのかを調べる。また、H30年度に得られたエキソソーム回収や標識法についての知見は、今後計画している臨床検体からのエキソソームの回収とその解析に大きく役立てることができる。
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