尿路上皮癌は再発率が高く、一度再発すると著しく予後不良である。我々は尿路上皮癌において症候性再発がより予後不良因子である事を報告したが、症候性再発の予測は容易ではなく、新たな分子バイオマーカーが必要であり、その開発は急務である。我々の検討から症候性再発群には局所再発と骨転移が、無症候再発にはリンパ節転移が多いという特徴がある。これは個々の癌に臓器特異があることを意味する。近年、癌細胞が転移前にエクソソームを分泌し、あらかじめ生存しやすい環境(前転移ニッチ)を整え、転移を成立させる可能性が示唆されている。これは癌の臓器選択性はエクソソームによって決定される可能性があることを意味し、治療経過でエクソソームを検出できれば、転移しやすい臓器が予測できる可能性がある。現在、エクソソームの視点から術後サーベイランスを検討している研究はなく、この技術が実用化すれば治療後のサーベイランスと医療費削減に貢献できる。本研究では、細胞実験として、①尿路上皮癌細胞株のエクソソームを蛍光標識することにより、エクソソームの特徴によるの臓器特異性を同定している。並行して、②患者検体・有転移患者検体を用いて、臨床検体における臓器特異的なエクソソームの検出と検証を行っている。令和元年度は、尿路上皮癌細胞株のエクソソームを蛍光標識する実験系を構築しており、CD9抗体標識を試みているが実験条件の調整中である。また②として膀胱がん、尿路上皮癌、精巣腫瘍、前立腺癌、腎細胞がんの各種癌の臨床検体から、分離したエクソソームを抗CD9抗体とレクチンアレイシステムにて検出する系の構築を試みた。その結果、各種がん患者より、糖鎖プロファイルの異なるエクソソームが検出可能なことが判明した。尿路上皮癌患者では、非セミノーマ患者、CRPC患者で特異的なレクチンによく反応するエクソソームが存在する可能性が示唆された。
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