尿路上皮癌は再発率が高く、一度再発すると著しく予後不良である。我々は尿路上皮癌において症候性再発がより予後不良因子である事を報告したが、症候性再発の予測は容易ではなく、新たな分子バイオマーカーが必要である。我々の検討から症候性再発群には局所再発と骨転移が、無症候再発にはリンパ節転移が多いという特徴がある。これは個々の癌に臓器特異があることを意味する。近年、癌細胞が転移前にエキソソームを分泌し、あらかじめ生存しやすい環境を整え、転移を成立させる可能性が示唆されている。これは癌の臓器選択性はエキソソームによって決定される可能性があることを意味し、治療経過でエキソソームを検出できれば、転移しやすい臓器が予測できる可能性がある。本研究では、エクソソームの標的細胞選択性を決定している分子として糖鎖に着目した。エクソソームの膜は脂質二重膜で構成されているが、膜表面には多数の糖鎖が発現している。最近、血清でN-結合型糖鎖の網羅的質量解析が可能な方法が開発され、弘前大学泌尿器科では様々な病態を予知するバイオマーカー開発への応用を試みてきた。本研究では、エクソソームのN-結合型糖鎖の網羅的質量解析によって、エクソソームの膜に発現している糖鎖が標的組織や標的細胞選択性において果たす役割を検討した。臨床検体の血清中からエクソソームを回収し、インテグリンサブユニットについて検討した。エクソソームからN-グリカンの切り出しとキャピラリー電気泳動法(Capillary Electrophoresis)による糖鎖構造解を行い、特徴的な変化があるかを検討した。また転移能が強い膀胱癌の培養細胞からエクソソームを抽出し、蛍光標識でラベル化したのちマウスに投与することで、エクソソームの臓器特異性があるかを検討した。
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