研究実績の概要 |
我々研究グループは正常前立腺組織、前立腺肥大症組織、前立腺癌組織を生検及び手術検体より抽出し、次世代シークエンサーを用いてマイクロRNAの発現を網羅的に解析した。結果として、前立腺癌組織及び正常前立腺組織との比較により、前立腺肥大症組織において特異的に発現低下を認めるマイクロRNAの候補として、miRNA-615-3p, miR-183-3p, miR-449b-5p, miR-449a, miR-449c-5pを同定した。また、反対に、前立腺癌組織において発現が低下し、前立腺肥大組織において最も発現が亢進しているマイクロRNAとしてmiR-184を同定した。今回、このmiR-184に着目し研究を進めた。臨床検体におけるvalidationを行い、前立腺肥大症組織において有意に発現が亢進する事を確認した (vs 正常組織; P=0.0082, vs 癌組織; P=0.0009)。同時に、このmiR-184は癌組織において正常と比して発現低下を認めており、増殖能・遊走能・浸潤能を指標とした機能解析の結果から、前立腺癌における癌抑制型マイクロRNAである事を解明した。miR-184の制御する遺伝子として、マイクロアレイ解析結果から、AKT2を候補遺伝子として同定した。本遺伝子は前立腺癌組織において発現亢進を認め(P=0.0001)、臨床検体を用いた予後解析にておいて、高発現群が患者予後不良と相関する傾向を認めた(P=0.069)。今後はsiRNAを用いた機能解析を行い、前立腺肥大症・前立腺癌における生物学的機能を解明していく予定である。 さらに今後、今回の解析で同定した、前立腺肥大症組織において特異的に発現低下を認めるマイクロRNAの機能を前立腺肥大症細胞株を用いて解明していく。
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