研究実績の概要 |
分子標的薬の開発と臨床応用が進み、血管細胞や免疫細胞を含めた癌微小環境が注目されている。われわれは、前立腺の発生増殖および発癌における上皮間質相互作用機構の研究をしており、癌関連線維芽細胞 (cancer-associated fibroblasts;CAFs)に着目し、増殖因子・サイトカインや細胞外マトリックスなどの液性因子を介した腫瘍細胞と間質細胞の相互作用が、去勢抵抗性の獲得に重要な役割を持つことを報告してきた。三重大学倫理委員会承認のもと、前立腺癌患者の前立腺生検組織から前立腺線維芽細胞の初代培養を行った。残余前立腺組織を5 mm3に細切し、1×PBSで洗浄、0.05% Trypsin-EDTAで酵素消化を行った後、間質細胞基本培地 (SCBM) にて培養した。それら前立腺癌関連線維芽細胞の産生する増殖因子、サイトカインをReal-time PCR法、ELISA法を用いて性状解析を行った。つぎに、in vitroでアンドロゲン感受性前立腺癌細胞(LNCaP)と前立腺線維芽細胞とを共培養し、AR,PSA,ARV1,ARV7,ARV567esのmRNA発現を解析した。前立腺線維芽細胞には、市販されている正常前立腺線維芽細胞(PrSC)と初代培養で得られた前立腺癌関連線維芽細胞を使用した。得られた結果は、前立腺癌関連線維芽細胞によりARV7の発現が上昇する可能性が示唆された。今後は、今回ARV7の発現の差を生じた前立腺癌関連線維芽細胞でのin vivo実験を行う予定である。
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