研究実績の概要 |
前立腺生検標本から前立腺線維芽細胞の初代培養を行った。それら前立腺線維芽細胞を用い、in vitroでアンドロゲン感受性前立腺癌細胞(LNCaP細胞, 22Rv1細胞)と前立腺線維芽細胞 とを共培養し、AR, PSA, ARV1, ARV7, ARV567esのmRNA発現を解析した。またAR抗体(N-20)を用いて共培養によるLNCaP, 22Rv1における蛋白発現も解析した。ヒト前立腺癌細胞のARVs発現修飾作用を有する可能性のあるCAFs候補因子の同定を行った。初代培養で得られた前立腺癌患者由来線維芽細胞のうち、一部のCAFsとの共培養でのみLNCaP細胞のARV1, ARV7のmRNA発現が上昇することを見出した。22Rv1細胞のAR, ARVs蛋白発現はいずれのCAFsとの共培養でも上昇した。初代培養で得られた前立腺癌患者由来線維芽細胞がヒト前立腺癌細胞のARVs発現修飾作用を有する可能性が示された。 初代培養で得られた前立腺癌患者由来線維芽細胞のうち2検体を用い、アンドロゲン感受性前立腺癌細胞株(LNCaP細胞)との共培養を行い、LNCaP細胞のmRNAを回収後、マイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行い、ARVs発現修飾作用を規定する線維芽細胞由来因子の同定を試みた。前立腺癌患者由来線維芽細胞との共培養によりLNCaP細胞のFBXO11、GAL3ST1、EPHA5は発現が低下し、RAET1E, P2RY2, IL-4R, IL7, NRG3, SVILは発現が増加した。前立腺癌患者由来の線維芽細胞が分泌するパラクライン因子のうち、ARVs発現修飾作用を規定する複数のパラクライン因子の候補を見出した。 本研究から、前立腺癌間質の多様性に着目した、前立腺癌関連線維芽細胞由来パラクライン刺激による前立腺癌細胞のARVs発現修飾作用の可能性が示唆された。
|