腎細胞癌の病理組織像の種類は複数あるため、本研究は腎細胞癌の遺伝子変異に着目した研究であり、集団を均一にする目的で、最も高頻度の淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)に絞って研究を開始した。腎細胞癌患者の治療前の血漿からQIAamp circulating nucleic acid kit(QIAGEN社)を用いて、cell-free DNA(cfDNA)を抽出した。cfDNAの存在は、蛍光光度計、定量的リアルタイムPCR法ならびにマイクロチップ型電気泳動装置にて確認した。続いて、腎細胞癌特異的な循環腫瘍DNA(ctDNA)をターゲットシークエンスで検出するために、公共データベースの約2万種類の遺伝子の中から、変異頻度や腎細胞癌発生・増殖のpathwayへの関連、分子標的治療薬の標的遺伝子を考慮して、標的遺伝子を48個に絞り込み、腎癌カスタムパネルを作成した。シークエンスは、癌細胞由来ゲノムDNA、リンパ球由来ゲノムDNA、cfDNAを次世代シークエンサーにて比較解析を行い、患者固有の腎細胞癌特異的遺伝子変異を同定し、ctDNAを同定する方針とした。次世代シークエンサーはHiSeq2500を使用した。解析は東大のスーパーコンピューターにインターネット接続して行い、解析pipelineはGenomon2を使用した。5例でシークエンスを行い、全例癌ゲノムで変異を検出した。また5例中2例でcfDNA中に変異を認め、ctDNAが存在することが分かった。またcfDNA中に変異を同定した症例では、デジタルPCRを用いて、変異の確認を行い、同一の変異が検出・確認できれば、シークエンスの結果が正しかったことが示せると考えた。現在必要に応じてデジタルPCRのプライマー・プローブを設計中である。
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