• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

高脂肪食によって炎症が起こるメカニズムの解明と前立腺癌に対する治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 18K16693
研究機関大阪大学

研究代表者

林 拓自  大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (50747079)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2020-03-31
キーワード前立腺癌 / 高脂肪食 / 炎症 / モデルマウス / 免疫細胞 / 腸内細菌叢
研究実績の概要

前立腺癌モデルマウスにおいて、高脂肪食は局所での炎症反応(マクロファージからのIL6産生の上昇)を介して前立腺癌の増殖を促進した。また肥満前立腺癌患者において、MDSCという抗腫瘍免疫を抑制する免疫細胞がより腫瘍内に浸潤していることが免疫組織化学染色によって明らかとなった。以上の結果を2018年日本泌尿器科学会総会で発表し、Clinical Cancer Researchに論文として報告した。
またこの高脂肪食による前立腺癌の増殖促進のメカニズムに腸内細菌叢が関与しているのではないかという仮説から、高脂肪食投与のモデルマウスに抗生剤としてアンピシリン・バンコマイシン・ネオマイシン・メトロニダゾールの4剤を投与したところ、前立腺癌の増殖が抑制された。この結果を受けてさらにどの抗生剤を投与することが増殖抑制に寄与しているのかを、実際に単剤ごとでマウスに投与することで評価する予定である。また同時にそれぞれのマウスの糞便についての解析が進行中である。
免疫調整作用を有するとされているメトフォルミンを高脂肪食投与のモデルマウスに投与すると、高脂肪食による癌の増殖が抑制され、局所でのMDSCの増殖が抑制された。疫学的研究により、メトフォルミンを内服している前立腺癌患者は内服していない患者と比較して癌の予後が良好というデータが報告されているが、この研究結果からメトフォルミンの前立腺癌に対する治療効果のメカニズムの一つとして、局所の免疫細胞を変化させることおよび炎症反応が関連していることが示唆された。この結果をInternational Journal of Urologyに論文として報告した。2019年日本泌尿器科学会総会でも発表予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高脂肪食投与のモデルマウスに抗生剤を投与することで、前立腺癌の増殖を抑制することができた。この結果より、腸内細菌叢の変化が高脂肪食による癌の増殖促進のメカニズムに関連していることが示唆され、さらに詳細なメカニズムを探索中である。本申請研究のテーマである「腸内細菌叢に着目した高脂肪食によって前立腺に炎症が起こるメカニズムの解明」に向けて順調に研究が進行していると考えている。

今後の研究の推進方策

具体的にどの抗生剤を使用することが高脂肪食による前立腺癌の増殖促進を抑制することができるのか、および腸内細菌叢がどのように変化しているのかを評価することで、より詳細なメカニズムを解明できると考えている。
またモデルマウスを使用したin vivoの実験系だけでなく、細胞株などを用いたin vitroの実験系を確立することで、モデルマウスで得られた知見を再現し、より短期間でメカニズムを解明できるようになることを目指す。それによって臨床での前立腺癌治療につながる知見が得られることを期待している。

次年度使用額が生じた理由

研究を進めていくうえで必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行金額が異なった。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] Department of Pathology, UAB(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Department of Pathology, UAB
  • [雑誌論文] Obesity, inflammation, and prostate cancer2019

    • 著者名/発表者名
      Kazutoshi Fujita, Takuji Hayashi, Makoto Matsushita, Motohide Uemura, Norio Nonomura
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Medicine

      巻: 8 ページ: 201

    • DOI

      10.3390/jcm8020201

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] High-fat diet-induced inflammation accelerates prostate cancer growth via IL6 signaling2018

    • 著者名/発表者名
      Takuji Hayashi, Kazutoshi Fujita, Satoshi Nojima, et al.
    • 雑誌名

      Clinical Cancer Research

      巻: 24 ページ: 4309-4318

    • DOI

      10.1158/1078-0432. CCR-18-0106

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Metformin inhibits prostate cancer growth induced by high-fat diet in Pten-deficient model mice2018

    • 著者名/発表者名
      Takuji Hayashi, Kazutoshi Fujita, Makoto Matsushita, Yujiro Hayashi, Motohide Uemura, Norio Nonomura
    • 雑誌名

      International Journal of Urology

      巻: 26 ページ: 307-309

    • DOI

      10.1111/iju.13847

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 前立腺癌モデルマウスにおいて、高脂肪食による局所での炎症・免疫反応はIL6シグナルを介して癌の進展を促進する2018

    • 著者名/発表者名
      林 拓自、藤田和利、野島 聡、林裕次郎、神宮司健太郎、加藤大悟、河嶋厚成、氏家 剛、永原 啓、植村元秀、森井英一、辻川和丈、野々村祝夫
    • 学会等名
      第106回日本泌尿器科学会総会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi