前立腺癌モデルマウスにおいて、高脂肪食は局所での炎症反応(マクロファージからのIL6産生の上昇)を介して前立腺癌の増殖を促進した。また肥満前立腺癌患者において、MDSCという抗腫瘍免疫を抑制する免疫細胞がより腫瘍内に浸潤していることが免疫組織化学染色によって明らかとなった。以上の結果を2018年日本泌尿器科学会総会で発表し、Clinical Cancer Researchに論文として報告した。 またこの高脂肪食による前立腺癌の増殖促進のメカニズムに腸内細菌叢が関与しているのではないかという仮説から、高脂肪食投与のモデルマウスに抗生剤としてアンピシリン・バンコマイシン・ネオマイシン・メトロニダゾールの4剤を投与したところ、前立腺癌の増殖が抑制された。この結果を受けてさらにどの抗生剤を投与することが増殖抑制に寄与しているのかを、実際に単剤ごとでマウスに投与することで評価する予定である。また同時にそれぞれのマウスの糞便についての解析が進行中である。 免疫調整作用を有するとされているメトフォルミンを高脂肪食投与のモデルマウスに投与すると、高脂肪食による癌の増殖が抑制され、局所でのMDSCの増殖が抑制された。疫学的研究により、メトフォルミンを内服している前立腺癌患者は内服していない患者と比較して癌の予後が良好というデータが報告されているが、この研究結果からメトフォルミンの前立腺癌に対する治療効果のメカニズムの一つとして、局所の免疫細胞を変化させることおよび炎症反応が関連していることが示唆された。この結果をInternational Journal of Urologyに論文として報告した。2019年日本泌尿器科学会総会でも発表予定である。
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