研究課題/領域番号 |
18K16698
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
丸山 雄樹 岡山大学, 大学病院, 医員 (00803850)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水素 / 水素ガス / 腎虚血再灌流 / ヘリウム |
研究実績の概要 |
腎虚血再灌流障害は腎移植患者の予後に影響を与える重大な病態であるが、有効な治療法はない。今回の研究の目的は、水素ガス、ヘリウムガスに着目し、腎虚血再灌流障害の新たな治療法の開発につなげる事である。これまでの研究により、再灌流後数分間の間に、血管内皮細胞からTNF-αやIL-1といったサイトカインが産生され、引き続き好中球やマクロファージの浸潤が促され、活性酸素種や細胞障害性サイトカインにより組織障害が生じることが明らかとなっている。水素は再灌流後に発生するそれらの活性酸素種と結合することで抗炎症作用を示す。水素は心臓。脊髄、肝臓などの臓器で虚血再灌流障害を抑制することが報告されているが、水素のガス吸入の腎虚血再灌流障害抑制効果の方向はまだなく、より臨床に応用しやすい治療法として、検証を行う。また、ヘリウムガス吸入はこれまで報告は少ないが、気道障害の患者において酸素化の改善させることがわかっており、これらの腎保護作用の検証を行う。 本年度の研究では、腎虚血再灌流モデルマウスを用いて、水素ガス吸入、ヘリウムガス吸入による血清BUN,クレアチニンの変化及び、腎組織のHE染色および好中球免疫染色の検証を行った。水素ガス吸入で好中球の組織浸潤が軽減され、抗炎症効果が得られることが示唆された。ヘリウムガス吸入に関しても、検証をすすめていく。今後は、これらの結果を踏まえ、好中球や、尿細管障害に関しても定量的に解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の腎虚血再灌流モデルである、腹腔内温度32℃、腎虚血45分間は各群の差を検討するのに、腎障害が強すぎるとの見解に至り、最適な体温と虚血時間の見直しを行った。現在は腎虚血時間をより実臨床に近い30分に見直し、検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、マウス腎虚血再灌流モデルを用いて水素ガス、ヘリウムガスの吸入が腎虚血再灌流障害に及ぼす影響を、血清、組織免疫染色、加えてフローサイトメトリーを行い検討を進め、腎虚血再灌流を軽減する治療法としての有用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
腎虚血再灌流モデルの、腹腔内温度及び腎虚血時間に関して、再検討を行ったため、組織解析等に遅延が生じた分、未使用額が生じた。今年度未使用額を平成31年度分にあてがい、引き続き研究目的の達成に向け執行する。具体的には、未使用分を用いて当初の計画に加え、好中球のフローサイトメトリーを行い、各群において検討する。好中球は腎虚血再灌流後の腎障害に寄与しており定量評価を行う。
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