研究課題
近年、多発の病巣をもつ前立腺癌の予後を規定するのは、最も容量が大きく、最も悪性度が高い病巣であることが判明し、癌制御と患者の機能温存を目的とした、「標的療法」という概念が提唱された。前立腺全体を治療の対象とするのではなく、前立腺の中の特定の部位に癌病巣の局在が確認されている場合に、その部位を標的化する画像技術を導入し、癌病巣を含めた前立腺の一部だけを対象に、焼却術などの外科的介入で、治療すべき病巣をなくす試みである。私達もこれまで、臓器機能障害を克服するため、磁性ナノ粒子を前立腺癌病巣内に取り込ませて磁場を照射することで、外科的治療よりも低侵襲で、繰り返し病巣のみを殺傷することが可能な局所療法を報告してきた。局所標的療法の実現には、正確な画像診断が不可欠である。最近、診断に最も有用であるMRIにおいて癌診断技術が大幅に向上し、より正確な癌病巣の局在診断が可能となってきた。その上、画像機器ソフトの開発によって、ベッドサイドで使用できる超音波(US)画像にMRI画像を融合し、リアルタイムで使用が可能な3次元イメージング法が発明された。これらの背景をもとに本研究では、私達が行ってきた磁性ナノ粒子を用いた癌局所療法の成果を応用し、MRI-US融合画像技術によって得られたイメージング画像を駆使し、新たな標的療法を樹立することを目的とする。本計画によって、前立腺癌に対し、QOLを温存できる低侵襲の新治療として、臓器温存標的方法が、可能かどうかを検証したい。
2: おおむね順調に進展している
対象は2017年4月から2018年7月に名古屋市立大学病院でMRI/TRUS-fusion biopsyを施行した症例172例。系統的生検12針および、生検前に撮像したmulti-parametric MRIにて、放射線診断専門医に指摘されたPI-RADS version2に基づき、カテゴリー3以上を示した病変を標的生検とした。Biojet生検107例およびRVS生検65例の癌検出率を後方視的に検討した。結果:Biojet群、RVS群において患者年齢(中央値69歳 vs 70歳)、生検前PSA値(中央値7.05ng/ml vs 7.41ng/ml)、前立腺体積(中央値35.0ml/ vs 36.2ml)、PI-RADS scoreに有意差を認めなかった。系統的生検、標的生検を合わせての癌検出率はBiojet群で62.2%、RVS群では58.8%で有意差を認めなかった。標的生検のみではBiojet群で49.5%、RVS群で40.0%とBiojet群の方が高い傾向にあったが有意差を認めなかった。よって標的生検ではBiojet群でもRVS群でも5割弱の癌検出率であったが、系統的生検でも検出される癌もあり、両者を同時に施行することで、より正確な癌検出に至ると考えられた。
BioJet穿刺技術の有用性が証明されたことにより、本技術を用いた局所制御治療の開発に向けて、シムレーション法の考案を目指していく。
3Dプリンタを用いて、前立腺ファントムも作成をこころみたが、納得のいくものが完成しなかった。前立腺ファントムの作成方法の再検討の必要があると判断し、一時研究が中断したため次年度使用額が生じた。前立腺ファントム作成をメーカーとさらに綿密に検討し、よいファントムを作成し研究を継続していく。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Asian Pac J Cancer Prev.
巻: - ページ: -
unknown
Prostate Int.
巻: 6 ページ: 18, 23
10.1016/j.prnil.2017.07.001. Epub 2017 Aug 9.