平成30年度は、当初の研究計画に基づき精巣組織からのSertoli細胞とLeydig細胞の分離方法の確立を試みた。 思春期後の精巣の状態を評価するため、8週齢のC57BL/6Jマウスを対象とした。精巣を摘出し、酵素処理により細胞を分離した。分離した細胞を5% Percoll溶液に静置し、上層と下層に分けた。上層の細胞を超遠心し、回収したものをLeydig分画とした。また下層の細胞を培養し、DSA (チョウセンアサガオ)lectinに接着したものをSertoli分画とした。Sertoli細胞マーカー(SOX9)およびLeydig細胞マーカー(STAR)を用いた蛍光免疫染色により、各分画における陽性細胞率を算出し、分離前と比較した。また、定量PCRでSertoli細胞に特異的な遺伝子(Sox9、Wt1、Rhox5)、Leydig細胞に特異的な遺伝子(Star、3b-HSD、Calb2、Lhr)の発現量を比較した。 Star陽性率(Star陽性細胞数/全細胞数)は、Percoll分離前、Leydig分画、Sertoli分画でそれぞれ2.9%、57.6%、2.3%であり、Leydig分画で高かった。SOX9陽性率(SOX9陽性細胞数/全細胞数)は、それぞれ10.5%、7.7%、15.6%であった。また定量PCRでは、Star、3b-HSDの発現量がLeydig分画で有意に高かった。Calb2、Lhr、Sox9、Wt1、Rhox5の発現量に有意差はなかった。 DSA lectin とPercollを用いた本方法では、Sertoli細胞の分離は困難であったが、Leydig細胞を効率よく分離できることが明らかとなった。Sertoli細胞はtight junctionで強固に接着していることが、分離を困難にした原因と考えられた。
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