まず、骨格筋間質由来幹細胞の臨床応用を目指して、大型動物を用いた実験を行った。緑色蛍光トランスジェニックミクロミニブタから抽出した骨格筋間質由来幹細胞をヌードラットに移植し、ミニブタの骨格筋間質由来幹細胞の分化能について検討を行った。その結果、ミニブタのSk-34およびSk-DN細胞が、マウスよりもヒトに近い性質を持っていることが明らかになった。また、Swain白血球抗原(SLA)クラスIを50%および100%に調整したミニブタ骨格筋間質由来幹細胞のミニブタ腓骨神経への同種間移植実験では、SLA50%一致と100%一致の移植効果に有意差が認められなかった。このことから、骨格筋間質由来幹細胞への免疫学的反応は比較的低いことが判明した。この結果については、現在論文投稿中である。 これらに並行して、骨格筋間質細胞由来サイトカインを用いた尿道括約筋再生の研究を行った。骨格筋間質細胞培養上清から精製したサイトカインカクテルをサイトカイン徐放シート(メドジェルシートⅡ)に浸透させ、ラット尿道括約筋損傷モデルの骨盤腔に留置した。メドジェルシートには正電荷と負電荷の2タイプが存在し、それぞれ負電荷と正電荷のサイトカインが放出される。今回は、多種のサイトカインを含有するサイトカインカクテルを使用したため、2つのタイプのシートを併用し、すべてのサイトカインが徐放されるように調整した。投与4週間後に尿漏出時圧を測定し、測定後にラットを灌流固定して、尿道括約筋の厚さなどについて組織学的検討を行った。当初の少数例での検討では、機能測定において明らかな改善効果が認められなかったため、再度サンプル数が増やされ、シートの留置方法などを改善して再度検討を行った。現在、測定結果の最終解析を行っているところである。
|