前立腺組織内における制御性T細胞 (Regulatory T cells -Tregs) の定量・分布について明らかにすべく、前立腺全摘除術によって得られた組織検体、前立腺生検によって得られた組織検体について免疫組織学的染色を行った。 T細胞のレパトア解析は進んでいるが、Tregに特異的な表面分子マーカーとしてForkhead box protein P3 (FOXP3) は一般的ではあるものの、制御性T細胞の中でも、免疫の抑制に強く働きかけるような制御性T細胞(effector Tregs -eTregs)の表面細胞マーカーである、C‐C chemokine receptor4 (CCR4) に着目し、先に記された組織検体に対して、免疫組織学的染色を行った。これについては、全T細胞中に占める制御性T細胞の割合、またその制御性T細胞に占めるeTregの割合を明らかにすることからCD3についても免疫染色を行い、加えてFOXP3とCCR4については二重免疫染色を行い、その組織内における分布、定量を明らかにすることが可能となった。 当初、全摘標本について免疫組織学的染色を行ったがTreg、およびeTregは腫瘍周囲に浸潤している傾向があり、その傾向は前立腺がん組織の異型度を示すのに一般的に用いられる Gleason score の高い(異型度の高い)前立腺癌において顕著な傾向が見られた。 また、その所見を前提として、のちに去勢抵抗性前立腺癌と診断された患者群における前立腺癌診断時の前立腺生検標本を用いて、免疫組織化学染色による評価を行った。この結果は全Tregを示唆するFOXP3陽性細胞中、eTregを示唆するようなFOXP3陽性、CCR4陽性細胞の割合は全体の60-70%程度であり、eTreg発現量は、無増悪生存期間や、全生存期間などとの相関を認めた。
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