研究課題
以前、我々はホルモン感受性前立腺癌細胞株におけるHedgehog経路について、腫瘍細胞はLigand(Shh、Dhh、Ihh)を産生し、間質を介した経路(Paracrine)を介して腫瘍増殖に関わっていることを確認し報告した。そのため、去勢抵抗性前立腺癌およびEnzalutamide抵抗性前立腺癌においても同様の傾向がみられると想定し、まず既存の去勢抵抗性前立腺癌細胞株(PC3、DU145)を用いてHedgehog経路のLigand(Shh、Dhh、Ihh)の発現をWestern blottingを用いて確認を行った。次に去勢抵抗性前立腺癌細胞株のHedgehog経路抑制(TAK-441、Cyclopamine)による腫瘍増殖抑制効果について、まず癌細胞株単独培養での効果をMTT cell growth assay kitを用いて確認した。また、Hedgehog経路の抑制効果についても蛋白レベルはWestern blottingを用いて、mRNAレベルはRT-PCRを用いて確認を行った。結果、去勢抵抗性前立腺癌細胞株においても腫瘍細胞自身はHedgehog経路を介して腫瘍細胞は増殖しておらず、間質細胞を介した腫瘍増殖経路(Paracrine)の可能性が高いと考えられた。このことは、去勢抵抗性前立腺癌においてもHedgehog経路抑制が治療効果を認める可能性があることを示唆しており重要な発見であると考えられる。Enzalutamide抵抗性前立腺癌細胞の樹立については、マウスの皮下移植モデルを用いるが腫瘍細胞生着の問題から、本年度での腫瘍細胞の樹立は困難であった。そのため、今後の実験をスムーズに行うため、既存のEnzalutamide抵抗性前立腺癌細胞株を使用し、今後の実験を行っていくことも検討している。
2: おおむね順調に進展している
昨年度までの実験系で、in vitroにおける単培養での去勢抵抗性前立腺癌細胞株でのHedgehog経路のLigand(Shh、DhhおよびIhh)の発現が亢進していることを確認した。また、単培養では去勢抵抗性前立腺癌細胞株に対してHedgehog経路阻害剤を投与しても直接抗腫瘍効果を認めないことを確認している。次年度では、in vivoでの抗腫瘍効果を確認するためEnzalutamide抵抗性前立腺癌細胞皮下移植モデル(去勢抵抗性前立腺癌細胞株(PC3、DU145)およびEnzalutamide 抵抗性前立腺癌細胞皮下移植モデル)に対するHedgehog経路阻害剤(TAK-441、Cyclopamine)の抗腫瘍効果を確認した。まず、Enzalutamide抵抗性前立腺癌細胞株を皮下移植し去勢を行ったモデルに対してHedgehog経路阻害剤を投与した。腫瘍の体積が、100mm3に到達した段階で1日1回の10mg/kgのTAK-441およびvehicleの経口投与を行う。腫瘍体積は、length X width X depth X 0.5236(mm3)で算出し、週2回の腫瘍体積の計測を行う。本モデルでは、vehicle群では腫瘍は増殖を続けたが、TAK-441を投与したモデルでは腫瘍増殖が抑制された。つまり、in vivoのモデルではEnzalutamide抵抗性前立腺癌皮下移植モデルにおいてHedgehog経路阻害剤は治療効果を認めた。今後、採取した腫瘍よりRNAを抽出し、ヘッジホグ経路の下流であるGli1、Gli2、Ptch1が抑制されているかを確認する。
Enzalutamide抵抗性前立腺癌皮下移植モデルにおいてHedgehog経路阻害剤(TAK-441)の抗腫瘍効果が確認された。採取した組織中のHedgehog経路の下流(Gli1、Gli2およびPtch1)が抑制されていることが確認されれば同モデルにおいてはHedgehog経路が抑制されることにより抗腫瘍効果が発現していることが確認される。また、他の去勢抵抗性前立腺癌細胞株(PC3、Du145)における同様の治療効果を確認する必要性があるため、今後同細胞の皮下移植モデルを用いて、Hedgehog経路阻害剤の抗腫瘍効果を確認する予定である。メカニズムの解明については、qPCRにおいてProbeを、human(腫瘍⇒autocrine)およびmouse(間質⇒paracrine)のものを用いることにより、どのようなメカニズムで抗腫瘍効果が発現しているか確認を行う。
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