尿路結石は90%の無機物質と数%の有機物質から構成されている。尿路結石内に数%含まれるマトリックス成分としてオステオポンチン(OPN)がクローニングされ、その後、ノックアウトマウスなどを用いた研究でシュウ酸Caを含む尿路結石の形成過程にOPNの発現が必須であることが明らかとなった。さらに近年、尿路結石症は、コレステロール過剰摂取などによる生活習慣病(メタボリックシンドローム)の一疾患と捉えられている。尿路結石症の生涯罹患率は食文化の欧米化に伴い上昇し、我が国では100人中6人、欧米では20人にも達する国もみられ、生産年齢の男性に多く、その成因の究明と再発予防法の確立は急務である。分子生物学、ゲノム解析を中心に研究が進められているが画期的な診断法、再発予防法、治療薬などは開発されていない。本研究では、OPN糖鎖が尿路結石の形成過程に果たす役割について調査し、結石形成における糖鎖性バイオマーカーや治療応用のための基礎的データを得ることを目的とする。 平成30年度は、レクチンアレイにより健常人と結石形成患者の尿中OPNの糖鎖プロファイルの比較を試みた。また質量解析により健常人と結石形成患者の尿中OPNの糖鎖構造を詳細に解析するを試みた。その結果、レクチンアレイにより、結石患者において、特徴的なOPNの糖鎖プロファイルを同定した。令和元年度、令和2年度にかけ、同定した尿中レクチン反応性OPNを結石治療前後の患者で長期的にモニタリングし、結石患者の治療後に尿中レクチン反応性OPN濃度が変化することが示され、結石形成のバイオマーカーとして、使用できる可能性が示された。これらの成果をInternational Journal of Molecular scienceに発表した。
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