研究実績の概要 |
補助金交付期間を通じて以下の①~④の研究を計画した。①尿路上皮癌細胞株からエキソソームを分離し蛍光標識する。②癌細胞が浸潤・転移するためには、浸潤突起と呼ばれる膜突起の形成が必須である。高転移性で浸潤突起形成能を有する尿路上皮癌細胞株YTS-1を用い、この浸潤突起形成に必須のタンパク質であるコータクチン(Cortactin)の発現を、shRNAにより抑制したコータクチン低発現株(Cortactin KD YTS-1)を樹立する。③親株であるYTS-1からエキソソームを調製し、マウスに前投与後、コータクチン低発現株を移植し、エキソソームが浸潤・転移に果たす役割について検討する。④臨床検体におけるエキソソームの検出、TMEM2の発現と予後の関係についての検証を行う。このうち、平成30年度までに①、②の実験を完了した。その結果、エキソソーム調製法と蛍光標識法を確立できた。また、樹立されたCortactin KD YTS-1は、親株に比べてエキソソーム分泌量が著しく低いことがわかった。令和元年度は③の実験を実施した。進捗状況は以下の通りである。 [実験]1.YTS-1から、超遠心によりエキソソームを調製した。2.エキソソームを6週令のBalb/cヌードマウスに尾静脈経由で注入した(10 ug protein / mouse)。3.エキソソームによる前処理の1週間後、Cortactin KD YTS-1を同マウスに尾静脈経由で注入した(2 x 10~6 cells / mouse)。4.癌細胞注入の3週間後に、肺を摘出し、切片を作製して肺転移を評価した。 [結果]以前の研究より、Cortactin KD YTS-1は動物モデルにおける肺転移能が極めて低いことが明らかにされていた(Tokui, N. et al. Molecular Medicine Reports 9:1142, 2014)。エキソソームの前処理により前転移ニッチが整えられてCortactin KD YTS-1の肺転移が上昇することが期待されたが、本研究では肺転移の上昇は見られなかった。
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