補助金交付期間を通じて以下の①~④の研究を計画した。①尿路上皮癌細胞株からエキソソームを分離し蛍光標識する。②癌細胞が浸潤・転移するためには、浸潤突起と呼ばれる膜突起の形成が必須である。高転移性で浸潤突起形成能を有する尿路上皮癌細胞株YTS-1を用い、この浸潤突起形成に必須のタンパク質であるコータクチン(Cortactin)の発現を、shRNAにより抑制したコータクチン低発現株(Cortactin KD YTS-1)を樹立する。③親株であるYTS-1からエキソソームを調製し、マウスに前投与後、コータクチン低発現株を移植し、エキソソームが浸潤・転移に果たす役割について検討する。④臨床検体におけるエキソソームの検出、TMEM2の発現と癌の転移との関係についての検証を行う。このうち、令和元年度までに①、②、③の実験を行った。その結果、エキソソーム調製法と蛍光標識法を確立できた。また、樹立されたCortactin KD YTS-1は、親株に比べてエキソソーム分泌量が著しく低いことがわかった。令和2年度は④の実験を実施した。[実験]健常者、および、膀胱癌患者(有転移症例)の末梢血から、超遠心法によりエキソソームを調製した。調製されたエキソソームからタンパク質を抽出し、エキソソームにおけるインテグリン、TMEM2の発現をウェスタン・ブロッティングにより解析した。1.健常者(4例)、および、膀胱癌患者(有転移症例4例)由来サンプルにおけるCD9のインテグリンの発現を調べた結果、健常者と膀胱癌患者で差は見られなかった。3.転移に関与する可能性が示唆されているTMEM2の発現を調べた結果、健常者と膀胱癌患者で差は見られなかった。
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