研究課題
最近の我々の研究において、マイクロRNAのガイド鎖だけでなく、パッセンジャー鎖も癌細胞において癌抑制的、もしくは癌促進的に機能していることを明らかにしてきた。本研究費を用いて遂行した研究では、腎細胞癌細胞におけるマイクロRNA発現シグネチャーに基づいて、発現が低下しているマイクロRNAに着目した。その中から、マイクロRNAのガイド鎖とパッセンジャー鎖の両鎖ともに発現が低下していたmiR-455-5p/-3p(パッセンジャー鎖/ガイド鎖)や、miR-532-5p/-3p(ガイド鎖/パッセンジャー鎖)に焦点を当てた。これらマイクロRNAは臨床検体を用いた解析で実際に、腎細胞癌組織で発現抑制されており、また、これらのマイクロRNAの低発現が、臨床的に腎細胞癌患者の予後不良と有意に関連していた。さらに、これらマイクロRNAの過剰発現により、腎細胞癌細胞の増殖、遊走および浸潤能は、有意に阻害された。マイクロアレイ解析によるゲノムワイドな遺伝子発現解析および、データベース分析を組み合わせることで、それらマイクロRNAが標的とする癌促進遺伝子を同定した。その結果から、細胞周期に関連する遺伝子SKA1、SKA3、AQP9に着目した。 腎細胞癌細胞において、miR-455-5pによるSKA1、およびmiR-455-3pによるSKA3やmiR-532-5p/-3p両鎖によるAQP9の直接制御を実証した。本研究においては、腎細胞癌臨床標本におけるこれら遺伝子の過剰発現を確認した。さらにmiR-455-5p/SKA1、miR-455-3p/SKA3、miR-532/AQP9軸が腎細胞癌細胞の進展に寄与していることを証明した。マイクロRNAのパッセンジャー鎖を含めて癌抑制型マイクロRNAに基づく分析戦略は、腎細胞癌におけるの分子的 病因の解明のための有効なアプローチである。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Cancer Science
巻: 111 ページ: 1392-1406
10.1111/cas.14327
American Journal of Clinical and Experimental Urology
巻: 7 ページ: 11-30