研究課題
前立腺癌は、アンドロゲン除去療法に対する耐性機構を獲得すると、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)へと変化する。従って、CRPC治療のための新しいアプローチは、効果的な治療法を探索する上で重要である。 マイクロRNAはノンコーディングRNAの一種であり、20-24塩基の小分子RNAである。パッセンジャー鎖とガイド鎖の2本鎖で構成されており、転写後制御を介して標的遺伝子の発現を制御すると考えられている。RNAシークエンスによるマイクロRNA(miRNA)発現遺伝子の分析により、miR-455のパッセンジャー鎖とガイド鎖(それぞれmiR-455-5pおよびmiR-455-3p)の両方が前立腺癌細胞で癌抑制型miRNAとして作用することが示された。癌化におけるmiRNAパッセンジャー鎖の関与は、miRNA機能の新しい概念である。 The Cancer Genome Atlasの大規模な患者コホートに基づいて、8つのmiR-455-5p/-3p標的遺伝子(PIR、LRP8、IGFBP3、DMBX1、CCDC64、TUBB1、KIF21B、NFAM1)が抽出された。これらの遺伝子発現の上昇は、有意に無病生存期間を短縮させた。今回、キュピンスーパーファミリーの一つであるPIR(ピリン)に注目した。PIRの発現はmiR-455-5pによって直接制御され、ホルモン感受性前立腺癌(HSPC)手術標本およびCRPC剖検標本で発現が上昇していることが示された。siRNAまたは阻害剤(ビスアミド)を使用した機能喪失アッセイにより、PIRの発現制御が癌細胞の遊走および浸潤を抑制することが示された。miR-455-5p/PIR軸は癌細胞の増殖性に寄与している。これらの結果は、PIRがHSPCおよびCRPCの有望な診断マーカーであることを示唆しており、PIRをターゲットとするCRPC治療に寄与しうる。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Cancer Sci
巻: - ページ: -
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