研究課題/領域番号 |
18K16727
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中嶋 一史 金沢大学, 附属病院, 助教 (70792810)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒトパピローマウイルス / 尿路 / 男性 |
研究実績の概要 |
HPV(human Papillomavirus)は、人に感染して疣を誘発するウイルスであり、現在100種類以上の型が同定されている。HPVは、尖圭コンジローマの原因となる低リスク型と、子宮頚癌を誘発する高リスク型に分類される。そのうち、高リスク型HPVは15種類以上同定されており、子宮頸癌及びその前癌病変等の原因として知られている。性的活動のある健常若年女性の20-60%にHPV感染が認められると報告されており、また、約80%の女性が生涯に一度はHPVに感染すると報告されている。そのため、HPVは性行為感染(Sexually Transmitted Infection; STI)の中で最も多い病原体の1つである考えられている。 一方、パートナーである男性におけるHPV感染についても研究されるようになり、男性にも女性と同等の割合でHPVが感染することが分かってきた。また、男性にも生じ得る陰茎癌・咽頭癌・肛門癌などの子宮頸癌以外の発癌にもHPV感染が関与していることが明らかになってきた。男性における主なHPVの感染部位は外性器(亀頭、陰茎)であるが、今までわれわれは、尿路にもHPV感染が生じていることを報告してきた。そのため尿路HPV感染と尿路悪性腫瘍との関連性について注目しており、尿路HPV感染の自然史を解明し、尿路悪性腫瘍との関連性を調べるためには、尿検体を用いることが最も簡便かつ低侵襲であると考えている。われわれは、女性の子宮頸癌検診で汎用されている液状細胞診の手法を用いて、尿検体を用いてHPV-DNA検査とパパ二コロウ染色を用いた細胞診による同時評価を開発した。今回、この手法を用いて男性尿路HPV感染に関する大規模疫学調査を行うことを立案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は当科の泌尿器癌手術症例に対してHPV-DNAの有無及びHPVの型判定を行った。ただ時間的な制約及び症例が期待通りに集まらなかったため、HPVの型判定までしか行うことができなかった。 次年度はHPV陽性検体に対するパパ二コロウ染色を用いた尿細胞診評価及びin situ hybridization法を用いたHPV感染細胞の特定を合わせて行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は昨年度HPV陽性であった検体に対してパパ二コロウ染色を用いた尿細胞診評価及びin situ hybridization法を用いたHPV感染細胞の特定を合わせて行っていく予定である。 尚、症例数を増やすために当院泌尿器科外来受診者には担当者から積極的に説明し、検体数を増やしていく予定である。増加した検体に対しても、我々で手分けをしてHPV-DNA検査、型判定を行っていき、同様にHPV-DNA陽性検体についてはパパ二コロウ染色を用いた尿細胞診評価及びin situ hybridization法を用いたHPV感染細胞の特定を合わせて行っていく。その後、泌尿器科における種々の疾患別にHPV感染率を比較検討し、細胞診の異常所見についてもあわせて検討しHPV感染と疾患別にHPV感染との関連性を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は当科の泌尿器癌手術症例に対してHPV-DNAの有無及びHPVの型判定を行った。ただ時間的な制約があり、まだHPV陽性検体に対するパパ二コロウ染色を用いた尿細胞診評価及びin situ hybridization法を用いたHPV感染細胞の特定は行うことができなかった。 次年度は残金を使用し、今までのHPV陽性検体に対しても尿細胞診評価及びin situ hybridization法を行っていく予定であり、さらに症例数を増やして検討していく予定となっている。
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