2型糖尿病の病態モデルとしてのOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF)ラットは過食、肥満、インスリン分泌不全など2型糖尿病の危険因子を数多く有す。Phosphodiesterase 5 inhibitorであるtadalafilは、平滑筋弛緩作用、抗炎症作用、抗酸化作用、血管内皮機能改善作用などが報告されている。OLETFラットにtadalafilを長期投与すると排尿反射、膀胱血流、膀胱上皮由来mediator (ATP/PGE2/NGF) の放出がどのように変化するかを検討した。 雄性OLETFラットを用い、36週齢よりtadalafil (100 μg/kg/day)12週間経口投与を行った。代謝ケージを用いて排尿行動を観察し排尿パラメータを算出した。tadalafil投与12週後に二次元レーザー血流計(OMEGAZONE) により、麻酔下、10cm H2O圧の伸展状態の膀胱表面血流量を測定した。56週齢で膀胱を摘出し、膀胱をクレブス液中で伸展して、膀胱上皮からのATP/PGE2/NGF放出量を測定した。 Tadalafil投与で、一回排尿量、24時間排尿量に変化はなかったが、投与後12週から24時間排尿回数の減少を認めた。雄性OLETFラットの膀胱の表面血流量はLETOラットに比べ低下を認めたが、 tadalafil 12週投与によりその改善を認めた。LETOラットに比べOLETFラットで膀胱伸展刺激による膀胱上皮由来ATP放出の増加を認め、tadalafil投与によりATP放出の減少を認めた。またNGFの増加を認めた。PGE2は変化しなかった。 糖尿病モデルラットにtadalafil投与を行うと膀胱の虚血が改善され、膀胱上皮由来のATP放出が減少した。これらがtadalafilによる蓄尿障害改善のメカニズムの1つと考える。
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