パーキンソン病(PD)の排尿障害は、排尿反射に対して抑制的に働く前頭前野-大脳基底核ドパミンD1系の病変によることが、動物実験により示唆されている。一方、臨床例での病態機序は、まだ十分に明らかにされているとはいえない。 非侵襲的な神経画像診断のひとつであるドパミントランスポータ―画像(123I-ioflupaneシンチグラフィー:DAT scan)は、黒質線条体ドパミントランスポーターと黒質細胞数との相関、変性した黒質細胞のin vivoでの進行度の測定、黒質細胞のドーパミン機能低下との相関などを評価することで、パーキンソン病の診断に用いられているが、今回我々は、排尿障害を評価出来るウロダイナミクスを組み合わせ、パーキンソン病のドパミン神経変性と排尿障害との関連の検討を行なった。ウロダイナミクスを用いて詳細な排尿機能障害を検討することは世界で初めての試みとなる。 結果として、問診票では夜間頻尿(70%),尿失禁(40%),昼間頻尿(80%)という下部尿路症状が認められ。ウロダイナミクス検査では,平均初感覚容量92.3ml,膀胱容量200.9mlで,50%に過活動性膀胱を認めた.DAT scanの特異的結合の定量指標(Specific Binding Ratio:SBR)は膀胱容量およびHoehn Yahr motor stageと有意な相関を示した. 我々の知る限り、パーキンソン病患者の膀胱容量が123I-ioflupaneシンチグラフィーで得られた基底核線条体におけるSBRと有意な相関があることを示したのは本報告が初めてである。 すなわち、本研究により、パーキンソン病における黒質細胞のドーパミン機能は直接的に蓄尿期の膀胱容量の制御に関連していることがわかった。
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