研究課題/領域番号 |
18K16752
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
山谷 文乃 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50623766)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / NK細胞 / NCR |
研究実績の概要 |
子宮内膜症は生殖年齢女性においてポピュラーな疾患であるが、その病態についてはまだ明らかにされていない。異物を排除する免疫機能の抑制によって子宮内膜症が発症・進展するという報告があるが、子宮内膜症に合併しやすい不妊症では異物を排除する免疫機能の過剰が報告されており、その病態は一見すると逆にみえる。本研究では、子宮内膜症と不妊症の免疫学的共通点をさぐるため、患者の腹水と子宮内膜を採取し、NK細胞発現とサイトカイン産生性を解析する。 子宮内膜症で手術を行う患者と他の良性疾患で手術を行う患者より腹水を採取し、腹水中のNK細胞のNatural Cytotoxicity Receptor(NCR)とそれに伴って発現(共発現)しているほかの活性性受容体と抑制性受容体についてフローサイトメトリーを用いて解析した。その結果、子宮内膜症患者でのNCRのNKp46発現が低下しており、さらに、活性性受容体のひとつであるNKG2Dの発現低下、抑制性受容体のひとつであるNKG2Aの発現上昇がみられた。すなわち、子宮内膜症患者での腹腔内NK細胞は細胞傷害性が低下しており、腹腔内に逆流してきた子宮内膜症細胞を排除できず悪化させてしまうと考えられた。また、それらの細胞が産生しているサイトカインについて現在解析をすすめている。今後さらに、手術患者のその後の妊娠の有無について調査し、不妊症を呈する患者、不妊症を呈しない患者でNK細胞の表面抗原発現に違いはみられないか解析する予定である。この研究が進むことにより、子宮内膜症のなかでサブグループが存在するか否かを提唱することができ、また、将来的にそれに合わせた治療方法などの開発にも貢献することができると考える。 研究実施計画にあった子宮内膜の採取について検体数を収集している。今後解析予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の蔓延により患者の減少と、採取する検体の減少がみられた。しかし、2021年度は検体採取量の回復と増加のきざしもみられ、研究者のサポートも得られるようになり、今後研究を進める体制が整ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では腹水のほか、子宮内膜を採取する予定としており、一昨年度までは内膜採取に難渋していたが、検体数とデータが徐々に集積してきたため、今後その解析を行い、学会等で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の蔓延により予定していた学会が延期になったりWeb開催となったため、旅費は使用しなかった。また、実験物品の購入や実験サポートのための物品を購入したが、まだ研究成果を論文化していないため、翌年度は論文投稿などにも使用していきたい。
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