研究課題
子宮内膜症の多くは不妊症を合併する。子宮内膜症の病因のひとつとして、免疫細胞の細胞傷害性が低下し子宮内膜症細胞を排除できないために発症・進展すると考えられている。一方、不妊症や不育症では免疫細胞の細胞傷害性が上昇し、受精卵を攻撃してしまうことが一因であるとされ、それは一見子宮内膜症と不妊症の免疫学的異常は相反しているようにみえる。本研究の目的は、子宮内膜症による不妊症におけるNK細胞の機能(活性性レセプターNCR、サイトカイン産生)との関連を明らかにし、不妊症を合併した子宮内膜症の病態を解明することである。子宮内膜症の腹水中NK細胞の活性性受容体のひとつであるNKp46発現は低下しており、炎症性サイトカインのIFN-g、TNF-α産生NK細胞は増加していた。また、深部子宮内膜症では、NKp46陽性NK細胞のNKG2C(活性性受容体)発現の低下、NKG2D(活性性受容体)発現の上昇が確認された。NKp46やNKG2Cの低下はNK細胞の細胞傷害性の低下を示していると考えられる。また、NKG2D発現の上昇は、以前の報告で子宮内膜症の腹腔内可溶性NKG2Dリガンドの上昇により子宮内膜症細胞が免疫回避しているとされており、反応性にNKG2D発現が上昇しているものと考えられ、子宮内膜症細胞が生存・増殖していくことに寄与していると考えられた。子宮内膜のNK細胞を調査すると、子宮内膜症術後に体外受精-胚移植を行った患者および子宮内膜症を有しながら体外受精-胚移植を行った患者ではNKp46発現やCD16+/CD56dim細胞に変化はなく、不妊症患者ではCD16+/CD56dim細胞が上昇していた。子宮内膜症の腹腔内と子宮内膜のNK細胞環境は異なっていると考えられる。また、子宮内膜症の良好胚率は低下しており、子宮内膜症の不妊原因は子宮内膜の免疫環境よりも胚因子が寄与している可能性が示唆された。
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Journal of Reproductive Immunology
巻: 155 ページ: 103765~103765
10.1016/j.jri.2022.103765