研究課題/領域番号 |
18K16765
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
今井 健史 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20778295)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 早産 / 分子状水素 / Treg |
研究実績の概要 |
早産は胎児期の炎症や感染を主因とし発生することが多く、脳性麻痺や慢性肺疾患など児の長期予後に大きな影響を与える世界的な問題である。そのため、早産の予防や発症予測、切迫早産治療は社会的要請度の極めて高い課題である。また、早産患者においても腸内細菌叢が変化しクロストリジウム属やバクテロイデス属が減少することが指摘されている。これらの細菌は大腸内で分子状水素(H2)産生を担う菌でもある。近年、H2が有する抗炎症・抗酸化作用が大変注目されているが、生体内において生理的に産生される分子状水素の臨床的意義および生体内での役割は未だ解明されていない。本研究は、ヒト妊婦において生理的に産生される分子状水素と早産の関係を検討し、得られた知見をもとに新規の早産、切迫早産の予防・管理法開発を目指すものである。 同意が得られた妊娠26週~33週妊婦を対象とし、ガスクロマトグラフィーを用いて生体内の生理的H2産生量を測定したところ、早産患者において有意にこれが低値であることが判明、H2濃度測定が早産予測の新規検査法となる可能性を見出した。一方で、マウスへの経口的H2投与、および、マウス脾臓からMACSにてnaive CD4を回収し各種サイトカイン刺激によりTregへ分化誘導しその際のH2添加の有無による分化誘導率の変化を検討したが、いずれも有意な差は認められなかった。現在、H2測定の一両日中に採取した母体血および臍帯血をマルチプレックスアッセイにて解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の仮説・推察のとおり、生体内H2産生量の多寡と早産発症が相関しているとの結果は得られた。一方で、作用機序として想定したTreg分化誘導へのH2の影響については、マウスモデルおよびマウス細胞に検討した実験では関連を見出せなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は引き続き生体内H2産生量計測を実施するとともに、提出済みの母体血・臍帯血のマルチプレックスアッセイ結果をもとに分子学的機構の解明に当たる。また、H2添加の有無がヒト末梢血PBMCからのTregおよびTh17細胞への分化誘導に与える影響、および、ヒト妊婦に対するH2投与(介入)の実施に向けた準備研究にもあたる。
|