早産は母体環境の悪化、特に母体炎症や感染を主因とし発生することが多い。早産および胎児期に感染/炎症に曝された児は、脳性麻痺や慢性肺疾患など長期予後に大きな影響を及ぼすことが知られており、世界的な問題である。早産の予防や発症予測する試みは社会的要請度の高い課題である。 我々は昨年度までに実施したヒト妊婦を対象とした検討において早産患者では腸管内で生理的に産生される分子状水素(H2)産生量が有意に低値であること、すなわち、H2濃度測定が早産予測の新規検査法となる可能性を見出した。近年、H2が有する抗炎症・抗酸化作用が大変注目されているが、生体内において生理的に産生される分子状水素の臨床的意義および生体内での役割は未だ解明されていない。本研究は、ヒト妊婦において生理的に産生される分子状水素と早産の関係を検討し、得られた知見をもとに新規の早産、切迫早産の予防・管理法開発を目指すものである。
当該年度において我々は、マウス脾臓およびヒト血液から回収した末梢血単核細胞(PBMC)を用いて、ナイーブCD4をナイーブTregないしTh17へと分化誘導する系、ならびに、ナイーブTregないしTh17をエフェクター化させる分化誘導する系を確立した。そして、H2投与が各細胞の分化誘導やエフェクター化に与える影響を検討を開始した結果、Tregへは有意な影響を与えることなく、Th17のエフェクターに対して直接的な抑制効果を有することを突き止めた。これを受けて、ヒト妊婦から便検体を回収し16SrRNAシークエンスを実施中。腸内細菌叢と分子状水素の関連について有益な結果を得つつある。
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