研究課題
本研究の目的は卵巣癌の微小環境をターゲットとした層別化による個別化治療の開発を行うことである。卵巣癌の高異型度漿液性癌の遺伝子発現解析により、がんと微小環境を反映したシグナルを特徴とする4つのサブタイプが存在することが明らかとなった。研究代表者は遺伝子発現サブタイプを背景とした卵巣がんの腫瘍微小環境に基づく新しい病理組織学的細分類を構築し、最も予後不良であるMesenchymal遺伝子発現サブタイプを反映するMesenchymal transition(MT)タイプがタキサン感受性があることを見出し、JGOG3016A1試験を立ち上げ、従来の化学療法よりもタキサンの総投与量を増量したdose dense タキサン治療がMTタイプで無増悪生存期間を有意に改善することを証明し報告した。Mesenchymalとは上皮間葉転換(EMT)を特徴とする浸潤能や転移能の高い悪性度の高い癌の性格で、間質細胞との相互作用により病理学的には間質反応と呼ばれる所見を特徴とする。一方最も予後良好である免疫原性の高いImmunoreactiveタイプを反映するImmune reactive(IR)タイプにはリンパ球を主体とする免疫反応浸潤が癌およびがん周辺に著明に認められ比較的なだらかな浸潤形態をとることを特徴とする。本研究では予後不良なMTタイプで高発現し、予後良好なIRタイプで低発現している分子を網羅的遺伝子発現解析を行い、免疫チェックポイント分子であるCD276/B7-H3(B7H3)に着目し、MTタイプをIRタイプに近づける治療を開発することを試みた。卵巣癌マウスモデルでB7H3をノックアウトすることで、腫瘍のB7H3が免疫抑制系細胞の骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC)が減少することを確認し、B7H3が腫瘍細胞におけるCCL2の分泌を介してMDSCを誘導しうることを明らかにした。
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