現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣癌においても、免疫チェックポイント阻害薬の適応が拡大される中、治療効果、副作用、また医療経済的な側面からも個々に応じた治療方の選択、すなわちプレシジョンメディスンが重要となる。それぞれの癌腫において、効果予測因子の探索は必要不可欠である。卵巣癌では、子宮体癌と同様にMSI、POLE変異症例を有する症例があり、これらの集団における免疫チェックポイント関連分子発現の検討および効果予測は重要である。全組織型の卵巣癌症例で凍結組織、あるいはパラフィン包埋ブロックからDNAを抽出し、MSI(MLH1, MSH2, MSH6, PMS2の免疫染色で確認)を評価した。免疫染色評価方法として、MMR蛋白はMSH2、MSH6、PMS2、MLH1のそれぞれの免疫染色を行い、腫瘍細胞にMMR蛋白発現が欠失している場合を陰性と評価し、4つの蛋白いずれかが陰性の場合をMSIと評価した。次に、腫瘍細胞におけるPD-L1の発現、腫瘍微小環境におけるCD8、PD-1の発現について免疫染色で検討した。CD8は免疫染色で腫瘍浸潤リンパ球発現数を0~3+の4段階で評価し2+以上を陽性と評価した。PD-1、PD-L1については、免疫染色で染色陽性レベル5%以上を陽性と評価した。結果、MSI症例は137例中6例で4.3%であった。卵巣癌においてはMSIとPD-L1・PD-1・CD8の発現には相関を認めなかった。これは卵巣癌でのMSIの割合が低いことが影響している可能性がある。また卵巣癌においては免疫チェックポイント阻害薬単剤で効果がある症例は限定的であると考えられる。今後免疫チェックポイント阻害薬と他の抗癌剤や分子標的治療薬との併用療法についてmutation burden rich マウスモデルを用いて検討したい。
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