われわれの研究室では子宮体癌におけるMSI-high症例はPD-1/PD-L1経路阻害薬が有効であり、MSI-highの検討が治療効果を予測するバイオマーカーとなる可能性を以前報告した。また、予後不良な脱分化子宮型体癌においても、MSI-highが高頻度にみられることを発見し、未分化癌部分においては免疫チェックポイント阻害剤の効果が期待でき、従来の抗癌剤治療に組み合わせて使用する複合的治療が効果的である可能性を報告した。子宮頸癌の中でもHPV陽性子宮頸部腺癌では有意に免疫細胞浸潤(CD8)が多く、腫瘍組織ではPDL-1発現が高いことを発見した。PD-L1高発現の子宮頸部腺癌患者に免疫チェックポイント阻害剤は有効である可能性が示された。 一方、卵巣癌において,MSI-highの頻度は10%程度、POLE変異の頻度は10-40%程度と推定されているが、当科の研究でも卵巣癌におけるMSI-highの頻度は5%程度であり、多く卵巣癌では他の薬剤と併用する複合的がん療法の必要性が示唆された。クリスパーキャス9: CRISPR-Cas9)によるゲノム編集で、POLE あるいはMLH1を欠失させたマウス卵巣癌細胞株の作成に挑んだが、POLE あるいはMLH1を欠失状態であるマウス卵巣癌細胞株は致死的であり、いまだPOLE-/- あるいはMLH1-/-細胞株の樹立に至っていない。現在、方向性を変更し、マウス卵巣癌細胞株にmutagenを投与しmutation burden richな状態を持つマウス卵巣癌細胞株を誘導中である。このmutation burden richを用いた担癌マウスモデルを作成し、PD-1/PD-L1経路阻害薬と他の免疫チェックポイント阻害薬(抗CTLA-4抗体薬)の併用効果、さらに既存の抗がん薬の併用効果を検討することが次の目標である。
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