研究課題/領域番号 |
18K16773
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
泉田 真生 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (90567299)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自然免疫 / インターフェロン / シンシチン / 胎盤形成不全 |
研究実績の概要 |
これまで、syncytinによる細胞融合が、宿主因子GILTによって抑制されることをin vitroで確認した。今年度は主に、in vivoでの実験を行った。交尾を確認したマウスにγ-IFNを腹腔内投与して出産数を数えた。PBS投与群の平均は7匹であった。γ-IFN投与WTマウスでは出産数はほぼなく、GILTノックアウトマウスでは、γ-IFN投与群でも平均4匹の出産があった。この結果は、γ-IFNによる妊娠の抑制にはGILTが必須であることを示している。胎盤は胎児臓器であるため、胎盤形成不全に母体のGILTが影響していないことを証明するためにWTオスと交尾させたノックアウトマウスメスにγ-IFNを投与したところ、WTメス同様に出産数はほぼ認めなかった。GILTノックアウトマウスのγ-IFN投与群は出産後も母体のお腹が大きいため、出産5日目に解剖したところ、子宮内で死亡している胎児を9匹中3匹認めた。この結果は、GILTノックアウトマウスのγ-IFN投与群では胎盤形成が起きるが、その胎児はTORCHのように障害を受けることを示している。妊娠高血圧症の一因に胎盤形成不全がある。基礎疾患のない妊娠高血圧症患者13名と健常人20名の胎盤におけるGILTタンパク質発現量を比較したところ、患者群で有意に発現量が高かった(p=0.0041)。ここからGILT蛋白質レベルの上昇がsyncytinによる胎盤形成を低下させることにより妊娠高血圧症が発症すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroで、syncitinが誘導する細胞抑制を自然免疫レベルで宿主因子が抑制する結果を受け、今年度はin vivoで実験を行った。ノックアウトマウスはすでに準備され実験に速やかに取り組むことができた。予想通り、マウス胎盤でも、宿主因子GILTが誘導され、妊娠数や出産数に同様の結果を得た。次に妊娠高血圧症患者レベルでも、宿主因子GILTが上昇していることを示すことができたため予定していた実験を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
感染症が妊娠、胎盤に与える影響を胎盤レベルで解明するため長崎大学の管理するベトナムのニャチャンの病院で出産する胎盤収集を予定しているが、COVID19の影響で着手できていない。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19流行により、ベトナムで行うサンプル収集のための打ち合わせなどが軒並み遅れているため次年度使用が生じた。 次年度の使用計画としては、渡航制限が解除されたら現地の病院に出向し、予定しているサンプル採取を始める。
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