17例の婦人科骨盤内膿瘍の患者をリクルートし、同意取得のうえ、MR Spectoroscopy(MRS)を施行した。うち1例は癌の転移巣であったため除外した。症例は卵管膿瘍4例、卵巣膿瘍1例、ダグラス窩膿瘍2例、リンパ嚢胞感染9例であった。臨床的判断で加療が行われ、適応と考えられた症例には、手術/経皮的ドレナージが行われた。リンパ嚢胞感染以外の7例はすべて手術/経皮的ドレナージが行われた。リンパ嚢胞感染例のうち、6例がドレナージが行われ、3例は保存的加療のみで改善した。手術/経皮的ドレナージが行われた場合は、膿瘍内容液を-80℃で保存し、のちに16s ribosomal RNA(rRNA)の次世代シークエンス(NGS)による菌叢解析にて真の起因菌の同定を行った。 MRSの信号と、起因菌同定の結果、またドレナージの要否などの臨床経過との関連につき解析を行った。起因菌の同定に関しては、MRSの信号と起因菌の代謝性の相関性は指摘できなかった。リンパ嚢胞感染例に限れば、MRSの信号によって、穿刺の要否に一定の差があり、要否の必要性を予見できる可能性が示唆された。2019年4月13日第71回日本産科婦人科学会にて発表した。 またリンパ嚢胞感染に対し、16s rRNAのNGSによる菌叢解析にて真の起因菌の同定を行った研究はこれまで報告がなかったため、別で報告した。骨盤内膿瘍となったリンパ嚢胞感染では、消化管由来の膿瘍と異なり、複合感染や嫌気性菌の関与は少ないとされていたが、NGSの菌叢解析を用いた起因菌同定においても同様の結果となり、真の起因菌の分布をより強固に示唆するものとなった。英文誌 Infectious Diseases in Obstetrics and Gynecologyに投稿し、2019年2月に掲載された。また2019年4月4日第93回日本感染症学会にて発表した。
|