研究実績の概要 |
最終年度では、術中迅速診断にて卵巣癌と診断された症例において腫瘍を一部採取し、ヒト卵巣癌検体に対するスタチン製剤の奏効を確認するHistoculture Drug Response Assay(HDRA)の系を樹立した。検討薬剤としてシンバスタチン100uM/250uM/500uMを、卵巣癌標準治療薬剤であるパクリタキセル40μg/ml、カルボプラチン30μg/mlと比較検討している。各薬剤の抑制率(Inhibition index)を算出することで、ヒト卵巣癌検体にスタチン製剤が奏効するかを明らかとすることができる。さらに抑制率の結果から、奏効症例と非奏効症例に分類し、両群間の臨床病理学的背景を比較検討し有意に差のある因子を抽出することに繋げられる。 研究期間全体では、スタチン製剤のメバロン酸合成経路以外の作用経路として、GO bioprocessではpositive regulation of release of cytochrome c from mitochondria, apoptotic signaling pathway, cell cycle process, chromosome segregationなどが、GO cellular componentではintegral component of plasma membrane, extracellular space, chromosome, non-membrane-bounded organelleなどが、GO molecular functionではspermidine binding, diamine N-acetyltransferase activity, catalytic activity, acting on DNAなどの経路が明らかとなった。また、スタチン製剤のワールブルク効果に対する制御機構として、PKM1とPKM2の発現に変化は見られなかったが、その制御因子であるPTBP1の発現がSimvastatin投与群において有意に上昇していることを確認し、制御機構の一端を明らかとすることができた。
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