研究実績の概要 |
子宮頸部上皮内腫瘍患者では治療介入により新生物を取り除くことが可能で、ひいては癌化を予防することができる。治療前後のHPV感染の有無は治療予後判定にも使われることから、HPV同様に腟内マイクロバイオームも治療介入前後で変化すると予想された。腟内マイクロバイオームは個体差が大きいこともあり、同一患者における経時的な変化を追うことでその変化を明らかにすることができるという利点もある。予備的な結果ではあるが、11名の子宮頸部腫瘍患者から検体を採取し、治療介入前後でのマイクロバイオームを解析したところ、7名の患者では治療後に腟内常在菌であるラクトバシルスが増加し、腟内自浄作用が回復していると考えられた。これらの患者では短期間の観察であるものの、病変の再発もない。 子宮頸管粘液中にはサイトカインが分泌されていることが知られているが、頸管粘液は採取量もまちまちであり、臨床的な意義を解析するにあたり、その中に存在するサイトカイン発現の多寡を適切に評価する方法がなかった。我々はマルチプレックス法を用い、子宮頸部腫瘍および病変のない患者から、頸管粘液中にあるサイトカイン発現の多寡を解析するために、重量あたりもしくはタンパクあたりのサイトカイン量を分析した。当初19種類のサイトカインを標的として28名の患者検体を用いて測定したが、検出感度以下となるサイトカインもあったため、検出可能な14種のサイトカインを標的として235名の患者検体を用い解析した。その中で、INF-g, GM-CSF,RANTES, Eotaxinは重量あたりでもタンパク当たりの計測値を用いても子宮頸部腫瘍の病変の進行度に比例してその発現量が増加していた。サイトカインは子宮頸部腫瘍の発生・維持と密接な関連が示唆される
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腟内マイクロバイオーム解析では現在25名の介入患者、25名の非介入患者の検体を集積し解析中である。介入患者と非介入患者でのマイクロバイオームの変化の違いを明らかにすることで、子宮頸部腫瘍患者における腟マイクロバイオームの意義について問いたい。これらの検体の臨床情報およびHPV型判定についても解析中である。 子宮頸部サイトカインの発現とHPV感染との相関を解析した。その結果、IFN-g,IL-17A,GM-CSF,MCP-1,GM-CF,RANTES,IL-17A,RANTES, MCP-1,eotaxinにおいてはHPV陽性例でその発現量が増加していた。特徴的な所見として、GM-CSFとRANTESはHPV陽性例で発現量が増え、病変の進行度に応じその発現量が増加していた。今後は、治療介入前後の患者検体におけるサイトカイン発現の変化についても解析を行う予定である。 腟内化合物の解析については、予備的な実験により、アミンなどの低分子化合物の検出はできている。解析対象となる低分子化合物を選び、解析していく予定である。
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