今回の研究においては、難治性卵巣癌の癌幹細胞類似細胞が、EMT現象を引き起こす際に発現するmiRNAを解析することが、精度の高いバイオマーカーの発見につながる。我々の今までの研究から、卵巣癌の癌幹細胞マーカーにCD24が挙げられることを証明しており、CD24陽性細胞を卵巣癌幹細胞類似細胞と位置付けた。癌幹細胞類似細胞から、それ以外の細胞に増殖や浸潤の指令を出す場合、その情報はエクソソーム内のmiRNAに含まれていると考えられた。しかし、癌幹細胞類似細胞から放出される情報の解析を行うも、いくつかの候補が挙げられるが、実際にEMT現象を引き起こす情報を特定するのが困難であった。癌幹細胞類似細胞(情報を出す側)とそれ以外の細胞(情報を受ける側)の細胞培養液からのmiRNAの解析を行うも、同様に特定するに至らなかった。エクソソームの採集方法についても、通常の遠心分離法では不純物が混入している可能性を示唆され、超遠心分離法では採集できる検体が非常にわずかであり、より純粋なエクソソームを、より効率的に採集することが課題と考えられた。超遠心分離法による細胞培養液でのエクソソーム採取が困難であれば、他の採集する検体の候補としては、難治性卵巣癌組織の培養液や循環している血液、腹膜に出現した播種病巣より産生されている癌性腹水などが挙げられる。ヒト難治性卵巣癌細胞もしくは組織を直接ヌードマウスに移植を行い、それぞれの検体採取も行っていくことも視野に入れたいが、コロナウイルス感染拡大の影響もあり、vitroおよびvivoでの実験進行は難渋している。
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