ヒトの流早産の原因としてウレアプラズマなどの病原体が関与している事が明らかとなってきているが、ヒト側の遺伝的背景の関与については未だ不明な点が多い。そこで、習慣性流産の患者を対象としたSNP解析を行い、その結果に基づいて抽出した病態との関連が疑われるSNPを有する候補遺伝子を研究の対象とした。特に病原体の排除に関わる補体蛋白のSNPに着目し、そのレコンビナント蛋白を作成し、野生型と変異型での生理活性の比較を行った。当該蛋白はSNPにより1つのアミノ酸の置換を有していた。レコンビナント蛋白の発現精製にはバキュロウイルス、昆虫細胞(IPLB-Sf21)の系を用いて発現を行った。大量培養系を用いて解析に必要なレコンビナント蛋白の十分量を確保した。また、ヒスチジンタグを用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィー、イオン交換カラム、ゲル濾過による精製を用いて高純度の蛋白を精製した。野生型・変異型の両レコンビナント蛋白を用いたグラム陰性桿菌に対する殺菌能の比較試験、基質の分解試験、赤血球の溶血試験を行ったが、いずれも有意な差を認めることは出来なかった。以上の結果より解析対象とした補体蛋白の変異については生化学的な解析において病態との関連を明らかにすることが出来なかった。本研究期間で解析対象とした蛋白では生理活性に有意差を見いだすことは出来なかったが、SNP解析の結果から病態との関連が疑われる遺伝子は他にも複数存在するため、今後の研究の対象となり得ると考えられる。
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