研究課題/領域番号 |
18K16796
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中野 知子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90754953)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 早産 / 分子状水素 / 炎症 / ミクログリア |
研究実績の概要 |
本研究では、炎症性早産における胎児脳障害を予防するために、抗酸化作用と抗炎症作用を持つ分子状水素の有用性の証明とメカニズムの解明とともに、安全性の確認を行い、臨床応用を目指すことを目的としている。 前年度は、水素水母獣投与に先立ち、分子状水素水の安全性を確認し、胎仔への明らかな催奇形性や発育障害を認めないことを証明した。 胎児脳障害に関する既報告では、原因の一つにミクログリアが関与していると言われている。しかし、その詳細は未だ議論の余地があり、解明がなされていない。そこで、本年度は分子状水素の投与に先立ち、母体免疫活性化モデルマウスを用いて、胎児・新生仔脳におけるミクログリアの変化について、フローサイトメトリーを用いて検討した。妊娠17日目にリポポリサッカライド(LPS)を投与し、日齢3および8の新生仔脳からミクログリアを分離、CD11cをマーカーに用いて、発達期ミクログリアの活性化について評価した。CD11c陽性率は、日齢3においてコントロール群に比較してLPS群で有意に低値であったが(p=0.002)、日齢8においては有意差を認めなかった。 発達期ミクログリアは髄鞘形成に関与するといわれているため、ミエリンに発現するPLPやMBPを定量し、日齢8において、LPS群でPLPおよびMBPの発現が低下していることを証明した(p=0.03,<0.01)。以上より、出生後に必要なミクログリア活性化がLPS群で減弱し、髄鞘形成が低下していることが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
MIA母獣より出生した新生仔脳による検討で、日齢3のミクログリアに違いを認めたが、さらにミクログリアの詳細を評価するため、RNA-Seqによる網羅解析を実施、結果を検討中であり、MIA母獣から出生した仔のミクログリアの病態解明に時間を要している。しかし、分子状水素を投与する時期や評価項目等を決定するためにも、MIA母獣から出生した仔のミクログリアで何が起こっているのかを評価することが重要であるため、病態解明に力を注いでいる。
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今後の研究の推進方策 |
網羅解析の結果により、MIA母獣から生まれた新生仔のミクログリアの機能にどのような違いがあるかを解析し、それらが分子状水素水投与により改善するかを評価していく。絨毛膜羊膜炎を発症した母体から出生した児にも、髄鞘形成の遅延などが認められるかを検討し、動物モデルが臨床応用につながるか評価する。
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