研究課題
不妊患者は年々増加し高齢化している中、不妊要因の中でも子宮腺筋症の発症は妊娠率や妊娠継続率を低下させることが知られている。我々は腺筋症の子宮筋層部位での血流改善による内膜の肥厚化に伴う妊娠率と妊娠継続率の上昇を目的に、血流改善効果が報告されているPDE5阻害薬に着目し検討した。本研究では、腺筋症モデルマウスの作成手法を確立し、ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase、PDE)5阻害薬の投与による子宮筋層の血流改善、血管新生・増減の評価を行い、その原因としての酸化ストレスとの関係を解析する。2019年度は、再度分与された腺筋症モデルのSHN系マウスの繁殖のために半年を必要とした。実験供試個体を確保できたため、腺筋症の自然発症時期を確認した。12週以降、2週おきに30週まで確認したが、平均して約25週で腺筋症を発症する事が確認できた。しかしながら、発症時には殆どの個体で形態的に明らかな腫瘍の形成が認められ、発症部位が子宮に起因しているケースが多かった。腺筋症の治療後に妊娠させる事を計画しているため、腫瘍形成よりも前に、腺筋症の発症誘発が必要と考えられた。加えて、PDE5阻害薬Tadalafilの投与についても検討した所、自由引水では外れ値を示す個体が認められ、脱落率も約4割に達した。現在は嚥下投与法を試みており、再度cGMP値の測定を実施して、手法を確立する。
4: 遅れている
昨年度に子宮腺筋症自然発症モデルマウスであるSHN系マウスの個体維持が不可能になるというアクシデントに見舞われたが、昨年新たに分与されたマウスを繁殖した。しかしながら他の系統のマウスと比較して不妊になる確率が高く飼育が難しい事もあり、実験に供試できる個体数が限られる。また腺筋症の自然発症についても、平均して25週以降と時間が必要である。以上の問題を解決すべく、現在更なる繁殖に取り組むと共に、雄マウス下垂体を使用した強制的な腺筋症作成の手法にも取り組んでおり、本手法により9-10週で腺筋症が発症する事を確認した。今後は腺筋症部位の更なる解析に取り組むと共に、Tadalafilについても投与を開始する予定である。
2020年度は、実験期間の短縮のため、平均で10週程で子宮腺筋症を発症する下垂体移植法の手技を確立し、腺筋症部位の確認を実施する。またtadalafilの投与法についても、自由引水による投与法では、尿中のcGMP値の変動が大きい事から、嚥下投与法への変更を予定しており、併せて検討を実施する。
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日本がん・生殖医療学会誌
巻: 3 ページ: 48-51
日本受精着床学会雑誌
巻: 36 ページ: 317-323