不妊症治療において、子宮腺筋症は不妊の原因のみならず、妊娠後の不育症にも関与しており、患者が挙児を得るための大きな課題である。子宮腺筋症は、月経困難症の原因にもなり、その治療にはホルモン剤を使用することが多いが、挙児希望の患者には難しく、早期に妊娠・出産に至ることが非常に重要である。我々は、子宮腺筋症に対する妊娠率の向上を目指し、腺筋症モデルマウスを作成し、その治療により妊娠率の向上を目指した。 実験は、ICRマウスを生後2~5日目にタモキシフェンを経口的に摂取させ、その後は通常通り飼育し、生後15週齢と20週齢で子宮の採取を行った。子宮組織は、H-E染色及びレゾルフクシン染色を実施し、子宮筋層内への内膜腺組織の侵入を評価した。結果は、両群のマウス共に子宮筋層内に内膜腺の侵入を認め、15週齢には子宮腺筋症を確認した。 子宮腺筋症患者の妊娠・出産のためには、子宮筋層への血流改善が重要であり、子宮内胎児発育抑制の改善効果のあるPDE5阻害薬を使用し、子宮血流の改善を評価した。11週齢及び15週齢よりPDE5阻害薬の投与を開始し、11週齢から開始した群は15週齢及び20週齢に組織採取を、15週齢から開始した群は20週齢に組織採取を実施した。15週齢から腺筋症を認めるため、本剤の子宮腺筋症の予防効果と、腺筋症発症後の治療効果を評価するために行った。全ての群において、子宮筋層内に侵入した腺組織の割合が多くなったが、筋層の肥厚等は認めなかった。そのため、子宮の血流増加による腺組織の増生が考えられた。今後、モデルマウスにPDE5阻害薬を投与し、妊娠率・妊娠継続率について評価していく。
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