研究実績の概要 |
卵巣癌において血管新生は極めて重要であるが、血管新生因子VEGF に対する抗体であるベバシズマブ (BEV) の臨床への導入にも関わらず、いまだ抜本的な生存率の改善を認めていない。本研究の目的は、卵巣癌においてPlasminogen activator inhibitor 1(PAI-1)がVEGF阻害とは異なる機序で血管新生を制御しているのではないかとの仮説に基いて、Bev耐性化のメカニズムを解明することである。2018年度はBEV耐性化モデルマウスを作成してmiRNA microarray法による網羅的解析を行い、BEV投与により腫瘍内で発現が有意に低下するmiRを同定した。2019年度は、この同定されたmiRNAとPAI-1、BEV耐性について検討を進めた。 具体的には、Public databaseを用いて、Bev を投与歴にある卵巣癌患者においてPAI-1の高発現が有意に予後不良であることを見出した。また、 BEV持続投与によって発現が0.5以下まで低下した計617のmiRの中から、過去の報告及びPublic database を用いたin silico解析を用いて、PAI-1の発現を制御している可能性が高い3つのmiR(miR-30b-5p, miR-143-3p, miR-192-5p)を抽出した。そしてBEV投与によって卵巣癌細胞においてこれらの発現が低下することをmiRNA qRT-PCR 法で確認した。最後に、ヒト卵巣癌細胞株にこれら3つのmiRの前駆体を強制導入し、強制導入によってPAI-1 の発現が有意に低下することを示した。以上の結果から、長期間の BEVにより、miR-30b-5p, miR-143-3p, miR-192-5p が低下し、それによってPAI-1の発現増強を来たすとの研究結果を得た。
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